今季一軍で躍動する小園海斗や林晃汰など、将来のカープを背負って立つであろう高校生の逸材を数多く獲得した2018年のプロ野球ドラフト会議。この年カープは、育成ドラフトで大学生外野手を1人指名した。それが全国的には無名の存在だった大盛穂だった。

今季プロ3年目を迎える大盛穂。写真はルーキー時代のインタビュー時。

 ドラフト1位で楽天に入団した辰己涼介(立命大)やソフトバンクに入団した甲斐野央(東洋大)といった同学年の注目選手とは違い、大学時代に輝かしい実績を残していたわけではない。それだけに、育成とはいえプロ球団からの指名には驚きを隠せなかったという。

「よく、頭が真っ白になるとか言いますが、自分の場合は『なんで?』という気持ちでした。自信がなかったわけではありませんが、プロにいける実力はないだろうと自分で決めつけていたので正直不安な気持ちはありました」

 大盛がルーキーイヤーの2019年に行った本誌インタビューで、指名直後の思い出をそう語ってくれた大盛。名前が呼ばれた瞬間は、うれしさと共に不安も混じっていたが、母親からの電話でプロに挑戦する気持ちを固めたという。

「指名されてから母親からすぐに電話がかかってきたんですが、泣きじゃくっていて何を言っているか分からなかったんです。でも、その電話で『あぁ、こんなに応援してくれていたんだな』と改めて気づいて、プロの世界でも頑張ろうと思いました」

 カープ入団後に新人選手が行う体力測定で、新人8選手の中でトップの数字を叩き出すなど、秘めている潜在能力はピカイチだった。プロ1年目の2019年は、二軍でチーム最多の109試合に出場。そしてわずか1年で、目標にしていた支配下登録を勝ち取った。

 背番号が3桁から2桁の「59」に変わって迎えた2年目の2020年は、課題だった打撃が向上。二軍で3割超の打率を残したことが認められ、7月に一軍デビューすると、73試合に出場して打率.259、35安打、2本塁打、16打点、走っては5盗塁を記録。スタメンも数多く経験するなど、激戦区の外野ポジションで存在感を発揮した。

 カープの育成出身選手の一軍での安打は中谷翼以来10年ぶりのことだった。期待された今季だったが、故障もあり思うような結果を残せていない。しかし9月22日に一軍復帰を果たすとスタメン機会を得るなど、再び定位置奪取へ向けて再び猛アピールを続けている。

「若い選手にチャンスを与えていただいているので、僕自身も結果を残せば使ってもらえると前向きに捉えています」

 二軍で汗を流す若鯉にとって希望の光となるような成長を見せる大盛。それはカープの育成力の高さ、そして伸びる選手を見抜くスカウティング力の高さを証明したとも言えるだろう。