◆J1でも何ら臆することなく戦える

─与えられた役割という意味では、今季からまたボランチを任される形になっています。こだわりのポジションだと思いますし、やはり気持ち的にも違うのではないですか?

 「そうですね。チームを引っ張るという立場は変わらないですけど、より自分が生きるポジションですし絶対に手放したくないと思っています。もちろん結果を示し続けないとすぐに奪われますし、そういう危機感を常に持ちながらプレーするようにしています」

─昨季も開幕当初はボランチでしたが、次第にシャドーの一角としてプレーする機会が増えました。そのときの心境は?

 「試合には出ることができていたので、そこまで気持ちが変わることはなかったです。磐田から戻ってきたときとは、まったく違う心境でした。サンフレッチェ復帰直後の18年もボランチではなく右のサイドハーフを任されたんですが、そのときのプレーは自分でもよく覚えてないというか、そんなに印象がないんです。いま改めて考えると、それくらいのプレーの質だったのかなと。でも昨年は覚えているシーンが多いですし、身の入ったプレー、自分のプレーができたなと思うシーンも多かったです。徐々に良くなってきていると思いますし、チームがどこであっても誰が監督であっても試合に出られるようになったという手応えがありますね」

─磐田から復帰する際に「J1でやれる自信が確信に変わった」という言葉もありましたが、その思いはより強くなっていますか。

 「そうですね。磐田で100試合以上の経験を積むことができましたし、自分を信じてプレーすればJ1でも何ら臆することなく戦えるという意識は強くなっています。でも重要なのは、その先です。プレーするのは最低条件でチームを勝たせること、結果を出し続けることが重要になってきます。そこは難しい部分なので、それを一瞬ではなく継続してできるようにしたいです」

─今季から磐田時代も背負っていたこだわりの『40』から、新たに『8』を背負うことになりました。

 「40も好きな番号だったんですけど、8番というのは広島では歴史のある番号ですしうれしさも感じました。実際に付けてみると責任感も全然違いますし、まだ2試合しかやっていないですけど、8番を背負っているからこそのプレーが自分でも増えたと思います」

─やはり自覚という部分では、まったく違いますか?

 「チームを引っ張るという自覚は出ますよね。ただ、そういう役割を与えられたとしても、自分は良い意味でチームの一つの駒として動くだけだと思いますし、性格的にも王様になるタイプではないので、常にチームのために働ける選手でありたいなと思っています」

─かつて風間八宏さん、森﨑和幸さんが付けていた番号ですし、広島出身の川辺選手にはより響いたのでは?

 「そうですね。そういう人たちが付けた番号を引き継げるのはうれしいですし、名前のある人たちが付けていたので、自分もそれくらいレベルの高い選手になりたいです。磐田に行く前、自分はサブの方のボランチをやっていて、カズさん(森﨑和幸)はずっとレギュラーチームのボランチでした。練習でのマッチアップでいつも感じるものがありましたし、練習から人を唸らせるようなプレーをしていたのがカズさんです。そのプレーを実際に肌で感じることでカズさんのすごさが分かりましたし、口ではなくプレーで見せていた姿が今でも印象に残っていますね」

─川辺選手もそういう立場になってきた印象があります。

 「自分の場合はまだベテランという年ではないですけど、若い選手と切磋琢磨しながら、より良いチームをつくっていきたいと思います。早く若い選手がたくさん試合に出て、若くて良いチームではなくて若くても優勝できるというチームになっていきたいです。青君(青山敏弘)、(林)拓人さん、(柴﨑)晃誠さん、そういう年上の選手が模範を示してくれるおかげで本当にチームは良い方向に向かっていると思います」(続く)