不動のボランチとして、押しも押されもせぬサンフレッチェの中心選手となった川辺駿。日本A代表にも初選出され、その知名度は広島の枠を超えて今や全国区になりつつある。ここではコロナ禍のなか、背番号8を継承した昨季の川辺の声をお届けする。
(『広島アスリートマガジン』2020年5月号)

豊富な運動量で攻守にわたり存在感を示す川辺駿選手。

◆8番を背負うことでより強く感じた責任感

─最高の滑り出しから一転して、大変なシーズンとなってしまいました。

 「自分たちも初めてですけど、チームスタッフも含め全員がこれまで経験したことがない出来事なので何が正解かも分からない状態です。自分たちは練習とはいえサッカーができますし、十分に気をつければ感染のリスクを抑えられるかもしれません。ただ普通の生活においては感染のリスクがどうしても高くなるので、気をつけるようにはしていますけど色々な意味で難しいところがありますね」

─やはりメンタル面で調整の難しさを感じることが多いですか?

 「体に関しては連休もあるのでリフレッシュした状態で臨めていますけど、メンタルに関してはリフレッシュしたつもりでいても『試合がない中で、どういった意図を持って練習をすれは良いのか』とか、ちょっと難しいところもありますよね」

─キャンプインの段階から最高のスタートが切れたと思いますが、中心選手としてどのような思いで今季に臨んだのでしょうか?

 「もちろんタイトルを目指して臨みましたし、キャンプから十分すぎるくらい良い内容を残すことができました。昨季からメンバーも大きく変わらなかったですし、積み上げたものが活かされているのが大きいと思います。新しくチームをつくっていくのは大変ですけど、このチームに関しては継続して積み上げることができました。その成果が公式戦2試合だけですけど明らかに現れていたと思いますし、しっかり結果として出ているので試合がないのは痛いですけど良いスタートが切れたと思いますね」

─城福監督が今季のテーマとして掲げたショートカウンターやミドルシュートの意識も、かなり浸透していましたね。

 「前線からの守備というのは自分たちの特長になってきていると思いますし、その強度やスピード、量というのはまだ物足りない部分もありますけど、それでも今までの自分たちとは違う部分をピッチ上で出せていると思います。そこは自分たちにとっても良い驚きですし、相手チームからすれば『どうやって勝てばいいんだ?』と感じさせる嫌なチームになっていると思います」

─自分たちでも驚くくらいですか?

 「ボランチから後ろの選手だけで守備をやるのは簡単です。でも前線からチーム全員でやるのは、口で言うほど簡単ではないですし実際に体現するのは難しいことです。そういう意味では、昨年と比べても選手の意識は全然違います。与えられた役割を全選手がしっかりやるというところに関しては、日本人、外国人関係なく共通認識として持てていると思います」