3月26日に開幕したプロ野球。カープは中日をマツダスタジアムに迎えて開幕3連戦を戦っている。

 ファンの歓声に包まれたスポットライトを浴びる戦いがある一方で、光が当たらない場所で鍛錬を積む選手もいる。今回は、ケガという逆境をバネにして、さらなる成長を目指す宇草孔基を取り上げる。

実戦復帰を目指す2年目の宇草孔基選手。

◆背中を押した背番号1の存在

 ルーキーイヤーの昨シーズンは、二軍で打率.281、62安打を記録し、10月に一軍デビュー。プロ初スタメンの試合から7試合連続で1番打者として起用されるなど、持ち味の俊足巧打を武器に、自身の存在感を存分に発揮した。一軍で才能の片鱗を見せていた矢先、宇草孔基をアクシデントが襲った。10月21日の阪神戦(甲子園)で死球を受けて、右腓骨(ひこつ)を骨折。無念の長期離脱となった。

 その右足はキャンプインを迎えても完治せず、二軍日南キャンプは別メニューでの調整を余儀なくされた。

 「他の選手が思い切って野球をやっているなか、僕はまだリハビリ段階。思うようにできていないもどかしさはありますが、万全になった時にレベルアップしていけるように、今はできることをやっています」

 ケガを前向きに捉えることができるようになったのには理由がある。今季から野手キャプテンに就任した鈴木誠也の存在が、宇草にとっては大きな励みになったという。

 「誠也さんには手術をする頃からよく連絡をいただきました。誠也さんが右足首骨折で離脱(2017年)した時の心境も話してくださいましたし、激励も受けたので、このケガと向き合い乗り越えようという気持ちになりました」

 鈴木との出会いは、宇草の野球への取り組み方も変えていった。

 「誠也さんと野球をやっているとすごくワクワクします。こんなに一緒に野球をやりたいと思った方は初めてです。もちろん技術も影響を受けていますが、プロ野球選手としての立ち居振る舞いだったり、人との接し方だったり、誠也さんの姿を見て、ああいう風になりたいと思っています。なので目指したい場所は誠也さんですね」

かつての鈴木のように、このケガが成長のきっかけになったと言える日が来るように宇草は復帰への道を歩んでいる。鍛錬の先には再び背番号1と同じ舞台に立つ未来が待っていると信じて。