昨季後半から九里亜蓮が抜群の安定感を見せている。今季は敗れた試合でも、大半でクオリティースタートを記録。先発の軸として、森下暢仁らと共にフル稼働中だ。ここでは九里の投球のルーツを探る意味でも、ルーキー時代のインタビューを抜粋してお届けする。
(『広島アスリートマガジン』2014年10月号掲載)
◆大学時代は前田健太の投球を参考
― キャンプではブルペン入りする日や投球回数など、球団からスケジュール管理されていたと思いますが、それでも連日100球を越えて投げ込んだりしていました。何か自身の目的などがあったのでしょうか?
「短い球数で自分が納得いく球が投げられていなかったというのが正しいのかもしれないですけど、他の人と違って僕は投げ込まないとダメなタイプなんです。ずっと投げ込んできたタイプなので、とにかく投げておきたいなと。大学のときも1月2日からキャッチャーに座ってもらって投げ込んでいたので、自分としては自主トレで投げ始めた日(1月21日)も相当遅いほうだったんです」
― 大学時代は前田健太投手を参考にしていたとおっしゃっていましたが、実際に前田投手やその他実績のある先輩投手たちとここまで過ごしてきて参考になったことはありますか?
「マエケンさん(ツインズ)と攝津さん(正・元ソフトバンク)が投げ合った3月21日のソフトバンクとのオープ戦で、攝津さんが球速が140キロちょっとでも、しっかりとコーナーに投げ分けて打者を抑えていた投球はとても勉強になりました。あと入団してから感じたのは、自分はタイプ的に、マエケンさんよりもバリさん(バリントン)だなと思いました。だからバリさんの投球を見たりして、投球術だったり、どこを目がけて投げているというのはしっかり見るようにしています」
― バリントン投手からアドバイスを貰うことはあるんですか?
「あります。英語の聞き取りはできるので、バリさんが言っていることは理解できます。ペラペラは無理ですけど、なんとか通じるくらいの英語は話せます。でも、通訳さんに聞きたいことを、どういう表現で聞いたらいいかを教えてもらってから、それを自分で直接聞きにいったりしています。バリさんからは『低めに投げる意識は忘れないように』というアドバイスをもらいました」
― シーズンも残りあとわずかになりました。ご自身の状態はいかがですか?
「これまでの数字をみてもらえば分かるように2勝5敗、防御率も3.72とチームに迷惑をかけてばかりです。チームの勝ちに貢献できている試合は少ないと思うのでそういった意味では全然だめですね。ずっと勝てなかったことで、力でどうにかしてやろうとか思っていたときもあったんですけど、二軍に落ちたことで小林コーチや、澤崎コーチから『お前の持ち味はなんなんだ?』、『自分はどんなタイプだ?』って自分の中にある答えを引き出してもらったことで、意外と単純なことだったんだなと思えるようになりました。今はすごく調子がいいです。しっかりバッターに向かっていけるようになったので、とにかくチームの勝ちに貢献できるようなピッチングがしたいですね」
結果的に、プロ1年目の九里が残した成績は、20試合に登板し2勝5敗、防御率4.00。この年入団した新人で、12球団一番乗りの白星を記録したものの、不完全燃焼で初めてのシーズンを終えた。
しかしプロ3年目からはコンスタントに登板を果たし、2017年からは二桁勝利目前の勝ち星をキープしている。今季こそは、かねてからの目標の一つでもある二ケタ勝利を成し遂げたい。