スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 大変な事態である。17日に菊池涼介、小園海斗、正随優弥の新型コロナウイルス感染が発覚したカープは、20日、新たに鈴木誠也、長野久義、石原貴規、大盛穂、羽月隆太郎の5選手と朝山東洋打撃コーチ、チームスタッフ1人の計7人の陽性を発表した。

 現時点で、計10人の感染者は、北海道日本ハムの14人に次いで多い。大事に至らないことを祈るが、感染経路が気になる。

 広島県内は4月中旬から感染者が増え始め、当初は12市町を巡る予定だった聖火リレーも、公道でのリレーは中止になった。5月17日に予定されていたIOCトーマス・バッハ会長の広島入りも見送られた。そして16日には緊急事態宣言が発出された。

 コロナの暗雲が立ち込める中、カープの活躍を楽しみにしていた広島県民・市民は少なくあるまい。今回のクラスター発生がペナントレースの行方に影響を及ぼすことは必至。ただただ残念というしかない。

 ビールをグビグビやりながらテレビでナイター観戦――。それが昭和のオヤジのたしなみだった。プロ野球選手をCMに起用するビール会社も多かった。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、昨年から“家飲み”をしながらナイターを観戦する機会が増え、昭和の風景が戻りつつあった。それは窮屈ながらも大切な日常のひとコマだった。それまでも奪われてしまうのか……。

 日本ハムにクラスターが発生した時、それはカープにも起こりえることだと覚悟していたが、今回カープに起きたことは、どの球団でも起こりえることなのである。

 残念ながらコロナの夜明けは、まだ遠い。例年以上に梅雨空が恨めしい。

(広島アスリートアプリにて2021年5月24日掲載)

毎週月曜日に広島アスリートアプリにてコラム「追球カープ」を連載中。
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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。