大学通算24勝の実績をひっさげ、2016年にカープからドラフト1位指名を受けた矢崎拓也(当時の登録名は加藤拓也。文中の表記は当時のもので記載)。プロ初登板では“ドラ1”の実力をまざまざと見せつけたが、以降は制球難も重なり結果を残すことができていない。

 はたして入団時の矢崎は、どのような思いを持ってプロ野球人生をスタートさせたのか。ここではルーキー時代のインタビューをもとに、力投型右腕の思考に迫る。
(『広島アスリートマガジン』2017年3月号掲載)

入団会見時の矢崎拓也投手。「マウンドで存在感を出していけたらと思います」と頼もしい言葉を残していた。

◆力と力の勝負ができる投手になりたい

― 自主トレからブルペンに入るなど精力的にトレーニングをされていますが、実戦に向けてはやる気持ちはありますか?

「特に焦りなどはありません。時期がくれば必然的に実戦に入ってきますし、そのための準備をしっかりしたいという気持ちが強いです」

― 今このインタビューもそうですが、入団以来メディアへの対応時に見せている非常に冷静な姿が印象的ですが、その点は意識されていますか?

「マウンドでの自分はまた別だと思いますが、普段から何かに動じたりはあまりしません。性格としては冷静な方だと思います」

― ドラフト1位で指名されたときはどのように思われましたか?

「指名されたことについてホッとしたのが一番です。1位という順位にはびっくりしました。ただ僕という人間は何も変わっていないのに、ドラフト1位という肩書きがつくことで、少なからず周囲が自分を見る目が変わってしまう部分はあると思いましたし、周囲の環境が変わっていくことに若干の戸惑いは感じました」

― 今回はルーキーインタビューということで、野球との出会いを教えていただきたいのですが、加藤投手が野球を始めたのはいつのことですか?

「小学2年生です。きっかけは父親から勧められたことです。周りの友達がサッカーをしていたので自分もサッカーをしていたのですが、父親から『サッカーは自分が球を触らなくてもゲームが成立する。だけど野球なら、試合に出れば必ず打席に立てるぞ』と説かれたことを覚えています」

― 当時ポジションはどこを守っていたのですか?

「中学校1年ぐらいまでは投手をしていましたが、その後高校1年時までは捕手をしていました。そして高校時代の監督から投手への転向を打診され、そこからずっと投手を務めています」

― ご自身のなかで憧れの投手像はありますか?

「具体的な人物はいませんが、子どもの頃から投手と打者の“力と力の勝負”を見て面白いと感じたり、『すげぇ』と感じていたので、そういう戦いができる投手になりたいと思っています」