2026年2月22日、ここまで公式戦負けなしのサンフレッチェ広島は、無敗記録を5に伸ばすべく、アウェイ・ヨドコウ桜スタジアムに乗り込み、C大阪との一戦に臨んだ。ジャーメイン良の豪快なシュートで先制するも、アディショナルタイム終了間際に1点を返され同点に。試合はこのままPK戦に突入するかと思われた。

 後半45+7分。ラストワンプレーで松本泰志が奪ったボールをゴール前に蹴り込むと、新井直人がシュートを放つ。これが中村草太に当たって流れると、そこへ詰めていた東俊希が右足を振り抜く。ボールがゴールネットを揺らした瞬間、広島の選手は一斉に東に駆け寄り、C大阪の選手は天を仰いだ。まさに執念が生み出した劇的な勝利だった。

 ここでは、C大阪戦の主人公となった東が、2025シーズン中に語っていたタイトルへの強い思いを、改めてお届けする。(『広島アスリートマガジン』2025年8月号掲載記事を再編集)

C大阪戦でゴールを決めた直後の東。勝点3を引き寄せたのは、利き足とは逆の右足だった

うれしい反面、悔しさもあった初タイトル

 「ルヴァン杯の初優勝を、僕は観客席から見ていました」

 2022年12月、広島が初のカップタイトルを獲得した日、東俊希はその歓喜の瞬間を国立競技場の観客席から見つめていた。2022年7月の試合で負傷し、同月末には左膝を手術。シーズンの後半はリハビリに費やした。

 スキッベ監督1年目のシーズン、東はその高い能力を評価され、それまでの主戦場である左サイド、WBにとどまらない複数ポジションで起用されボランチとしての能力を開花していた。誰もが認めるチームの主力。タイトルが狙えるシーズン途中での離脱に、東は正直な胸の内をこう語る。

「だから優勝はうれしい反面、悔しいという思いもありました」

 複雑な思いを抱きながら歓喜に沸くピッチ上のチームメートたちを見つめ、「次は僕が、ピッチの上で優勝を体験したい」と決意した。そしてその決意は、2025シーズンに果たされることとなる。

 同年7月、サンフレッチェ広島は好不調の波に揉まれながらも、タイトルに向けて熾烈な戦いを繰り広げていた。東は自身のプレーについてこう語る。

 「2025シーズン序盤は自分の調子も悪くて、思うようなプレーが出せずにいました。ただ、5月中旬からボランチで起用されるようになると、新しい自分のプレーを見つけたり、良いプレーもいくつか出てきたと思っています」

 手応えを感じる一方で、課題もあった。フィジカルの強度、走力、パワー。そして、視野の広さだ。

 「ボランチは360度を見なければいけない。自分のプレー動画を見ていると、『ここでターンができたな』『逆に展開できたな』と感じる場面がいくつかあるので、そのあたりはまだまだかなと思っています」