俊足巧打が持ち味の宇草孔基選手。一軍定着を目指しアピールを続けていく。

◆逆境を乗り越える力となった背番号1の存在

 5月18日に一軍に昇格した宇草孔基。昇格した18日の巨人戦で早速スタメン出場を果たすと、5月28日のロッテ戦では「2番・ライト」で出場。3安打を放ち、勝利に貢献した。それ以降もスタメン出場を続けており、コロナ禍の影響で巡ってきたチャンスを活かしつつある。

 プロ1年目の昨季は10月に一軍デビュー。持ち味の俊足巧打を武器に、1番打者として存在感を発揮した。才能の片鱗を見せていた矢先、宇草をアクシデントが襲った。10月21日の阪神戦(甲子園)で死球を受けて、右腓骨(ひこつ)を骨折。無念の長期離脱となった。

 その右足は春季キャンプを迎えても完治せず、二軍日南キャンプは別メニューでの調整を余儀なくされた。

「(手術以降)毎日“早くくっつけ”と願いながら、リハビリを続けてきました。キャンプでもみんなが思い切って野球をやっているなか、僕はリハビリ段階。思うようにできていないもどかしさはありましたが、万全になった時にレベルアップできるように、早く治ってくれと願いながら練習していました」

 ケガを前向きに捉えることができるようになったのには理由がある。今季から野手キャプテンに就任した鈴木誠也の存在が、宇草にとっては大きな励みになったという。

 「誠也さんから激励を受け、右足首骨折で離脱(2017年)した時の心境も話してくださったので、このケガと向き合い乗り越えようという気持ちになりました。もちろん技術にも影響を受けていますが、プロ野球選手としての立ち居振る舞いだったり、人との接し方だったり、誠也さんの姿を見て、ああいう風になりたいと思っています。なので目指したい場所は誠也さんですね」

 リハビリ復帰後の活躍は目を見張るものがある。実戦復帰戦となった4月30日の阪神戦(ウエスタン・リーグ)では、第1打席で安打を放ち、3回には本塁打を記録。一軍昇格以降も離脱した主力の穴を埋める活躍をみせ、今シーズン8試合目のスタメン出場となった6月5日の楽天戦では、昨年まで大リーグで活躍した田中将大からプロ初本塁打。また、交流戦以降、5盗塁(交流戦トップ・6月7日時点)を記録するなど、バッティングだけでなく足でも魅せている。

 着実に結果を積み重ねているだけに、鈴木誠也をはじめとした主力選手が一軍に戻ってきてからも出場機会は巡ってくるはずだ。俊足巧打が魅力のカープの次世代を担う外野手。一軍で得た自信を糧に、今シーズン、ケガからの完全復活を目指していく。