◆打ちたい、打ちたい、そればかりになっていた

─必要以上にいろいろ考え込んでしまったり、結果を求め過ぎたことが要因ですか?

「二軍のときは『打てる、打てる』と思って打席に入っていたんですけど、一軍のときはどうしても『打ちたい』、『結果を出したい』っていうことばかりが頭にあって、全部がバラバラな状態になってしまいました」

─具体的に打撃にどのような影響を与えたのでしょうか?

「自分の中での余裕が全然違いました。『打てる、打てる』と思っていれば、力みもないし、どんな投手でも打てるような気持ちだったんです。でも、一軍だと『打ちたい、打ちたい、打ちたい』ってそればかりになってしまって、自分で勝手に力んでバットが出なかったり、甘い球も振れなかったり……」

─『打てる』と『打ちたい』ではそこまで大きな差があるものなんですね。

「今考えたらすごく悔しいです。なんで自分のスイングができなかったのかなって。アドレナリンとか出て一軍の雰囲気とかで打てる気がするんですけど、またそれが余計な力みにつながっていたんですよね。1打席っていう少ないチャンスで結果を出さないといけないとなると、どうしても『打ちたい、打ちたい、打ちたい』っていう考えになってしまう。初ヒットを打ったときは、とにかくきた球を思いっ切り振ろうっていう気持ちでいたら打てたのに、1本出たことで今度は『もう1本、もう1本』って求めてしまって、結局それがいけなかったのかなって。余裕がなかったです」

─結果を求めて焦っていたのでしょうか?

「多分それは、自分に自信がないからで、余計な力が入っていたんです。もっと練習して自分の打撃に自信がついてくれば『打ちたい、打ちたい』って思わなくなるのかなと思いました。だから悔しい思いは、その試合の中ではなく、試合が終わってから練習して発散していました。自分に負けたくないし、その日ダメだったことがずっと続かないようにするには練習しかなくて。今は『何がダメだったんだろう……。あ! ここがダメだったんだ』っていうのが分かってきたし、それは良かったことかなと思いますね」(後編に続く)

◆2013年から2020年に行った鈴木誠也のインタビューは、広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」で公開中。