東京五輪で金メダルを目指す侍ジャパンのメンバーに、カープから12球団最多となる4選手が選出された。この連載では、侍ジャパンの4番として期待がかかる鈴木誠也が、過去に本誌の独占インタビューで語った思いを取り上げ、プロ入りからここまでの軌跡を振り返る。

 6回目となる今回は、初の開幕スタメンを勝ち取ったプロ3年目の夏に行った独占インタビューを紹介する。鈴木の成長の陰には、偉大な先輩である、黒田博樹や新井貴浩の存在があった。
(広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」に掲載)

2015年6月5日の楽天戦で決勝タイムリー二塁打を放った鈴木誠也選手。

◆[戦いの中で学んでいった"フルスイング"]日々努力、日々成長。

─今季はシーズン前から外野レギュラー争いが注目されるなか、初の開幕スタメンを勝ち取りました。

「特にやらないといけないという気負いもなかったですね。僕は若いですし、とにかく勢いをつけることができたら良いなと思って試合に臨みました。でも、その気持ちが空回りして肝心の打撃で結果を残すことができなかったですね」

─シーズン序盤は、やはり打撃の状態も思わしくなかったのでしょうか?

「状態は良くなかったですね。あのときは上半身ばかりに頼る打撃になってしまって、打ちたがっていたと思います。それで変化球を当てにいってしまったり、変化球を投げられて頭にそれを入れていると真っすぐで空振りしてしまったり……、とにかく悪循環にハマっていたように思います」

─そんな中、4月19日の中日戦(マツダスタジアム)では野間峻祥選手がプロ初本塁打を放った直後に今季初本塁打を放ち、ベンチでは野間選手と抱き合って喜んでいました。あの時はどのような心境だったのでしょうか?

「野間さんが勝手に抱きついてきただけで、僕からではないです(笑)。あの時期、僕は試合になかなか出られなくなっていて、野間さんのスタメンが続いているときで悔しさを持っていました。あの試合では、野間さんが左投手からホームランを打ったこともあって、『自分の出番がまたなくなってきてしまうかも……』という思いもあって、『絶対に打たなきゃいけない』という強い気持ちで打席に入って打ったことが良い結果につながりました」

─交流戦に入って出番が増え、8試合連続安打をマークするなど鈴木選手の調子が上がってきたように感じました。何かきっかけがあったのでしょうか?

「交流戦でパ・リーグの打者を見ていると、思い切り振ってくるし、恐いなと感じました。それを見て『こういう打者になりたい』と思ったんです。そこから自分の中で感覚も良くなっていったように思います。パ・リーグの打者を生で見ることができたのは僕にとって大きかったですね」

─強く振るという感覚は、昨季にはなかったものですか?

「長く一軍にいて、それなりに打てるときもある中で、『何か違うな』とか『単打ばかりはいらないな』という感覚があったんです。塁に出ることも大事ですが、僕は長打も求められているし、物足りないと思っていた部分はありました。そんなときにパ・リーグと試合をしていろんな選手を見て、こういう方が良いんだなと思うようになりました」

◆2013年から2020年に行った鈴木誠也のインタビューは、広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」で公開中。