今季、一軍でショートの座をつかみつつある小園海斗選手。

 前半戦終了時点で52試合に出場し、打率.326、62安打、1本塁打、19打点。プロ3年目にして、間違いなく自身最高のシーズンを送っているカープの背番号51・小園海斗。高卒1年目から一軍で経験を積み、2年目は、シーズンのほとんどをファームで過ごして地力を蓄えた。その成果が、間違いなく今季に生きている。

 そんな小園の原点ともいえるのが高校時代、報徳学園(兵庫)での3年間だ。中学時代、枚方ボーイズ(大阪)で全国優勝を経験した「エリート中学生」だった小園は、報徳学園でもしっかりと実力を伸ばし、ドラフトで4球団が1位競合するほどの選手へと成長した。

 3年前の夏、甲子園に出場した小園は当時すでに「大会注目のショート」として注目される存在だった。そして、初戦となった2回戦からその実力を遺憾なく発揮する。1番ショートで先発し、4打数3安打。3安打はすべて二塁打で、1試合3二塁打は大会記録だった。

 続く3回戦は、愛工大名電を相手に7対2で完勝。小園は5打数1安打とやや不本意な結果に終わりながらも、チームをしっかりと牽引してベスト8へと導いている。

 そして迎えた準々決勝・対済美(愛媛)戦。この試合も定位置の1番ショートで先発した小園だったが、第1打席でいきなり「想定外」の出来事に襲われる。対戦相手の済美はそれまで、エースの山口直哉を惜しみなく起用し、勝ち上がってきたチーム。当然この試合の先発も山口で来るはず……。小園はもちろん、報徳学園ナインも全員がそのつもりで対策を行ってきた。

 しかし、済美のマウンドに上がったのはエース・山口ではなく大会初登板の池内優一。

「ビックリした」

 試合後にそう語った小園は第1打席から相手の内角攻めにあい、セカンドゴロ。これでリズムを狂わされたのか、投手が山口に代わったあともバットから快音は聞かれず、3打数0安打。チームも2対3で敗れた。

 最後の夏の打撃成績は12打数4安打1盗塁。数字自体は決して満足いくものではなかったかもしれないが、走攻守で非凡なプレーを見せ、最後は「甲子園は最高の場所でした」と語って聖地を去った。

 あれから3年。舞台は甲子園からマツダスタジアムに移ったが、小園は“あの頃”と同じようにグラウンドを駆け回っている。

 プレースタイルは、当時とほとんど変わらない。高校生ショートはプロ入り後、守備に悩み、コンバートを余儀なくされることも珍しくない。しかし、小園はプロ1年目から一軍のレベルを経験。今では、ショートのレギュラーの座をつかみつつある。

 一歩ずつ、しかし着実にプロの階段を昇る小園海斗。高校時代に見せたその才能が今、プロの舞台で花開こうとしている。