53年ぶりのメダル獲得を目指す、東京五輪・サッカー男子日本代表。グループリーグを3連勝で突破し、準々決勝進出を決めた。サンフレッチェ広島からはGK大迫敬介が出場。貪欲に高みを目指し、どんな失敗も飛躍の糧にしてきた広島の守護神が、五輪の舞台をさらなる成長のきっかけとする。

サンフレッチェ広島・大迫敬介選手。

◆世界で躍進する攻撃的守護神

 高校1年のころ、大きな日本国旗に目標を記して部屋に飾った。『サンフレッチェ広島トップ昇格』『A代表』『東京五輪』『2022年カタールW杯』『頼られるGK』『笑顔のGK』、ほかにもまだまだある。2019年に選出されたA代表に続き、今回は東京五輪。書き記した中で最も大きな、もう一つの夢だった。

 ここで大迫敬介の歩みを振り返る。出身は名立たる強豪校で知られるサッカー王国・鹿児島。小学1年のころからGKが楽しく夢中になったが、大迫が所属していた少年団にGKコーチは不在で、シュートをただ止めるだけの練習。技術を磨くには恵まれた環境ではなかった。それでも小学6年の頃にはU-13日本選抜に入るようになり、そこで知った練習法を持ち帰り反復練習に取り組んだ。

「高校に入るまではほぼ独学でした。GK専属のコーチのいる環境で学びたかったので、そういった練習環境を求めると、自ずとユースに行こうという考えになりました。中でも広島ユースというのは練習に打ち込める環境が整っていますし、プロとの距離が近くて、自分が一番上達できるチームだと思いました」

 目標を実現させるためベストな選択をし続けてきた大迫は、トップ昇格を果たしプロ2年目で一気に覚醒した。公式戦デビューは2019年2月ACLプレーオフでのチェンライ・ユナイテッド戦。デビュー戦とは思えない落ち着きで好セーブを連発すると、J1リーグではクラブ新記録となる5試合連続無失点をマーク。正GKの座を勝ち取ると、U-23、そして日本A代表にも選出された。大迫の強みは、的確なコーチング、シュートストップやキックの精度などに加え、攻めのスタイルにある。例えばハイボールに触れることができずゴールされたとき、出ることを恐れるのではなく、再び出るタイミングを考えて挑戦する。

「僕はチャレンジャーだと思います。リスクがあってもそこに飛び込むタイプ。トライすればミスも生まれますけど、ネガティブなミスよりポジティブなミスの方が良いと思っています」

 常にポジティブだからこそ試合を重ねるごとにプレーが良くなっていくのが大迫の魅力。それが大舞台になればなるほど、大きな成長の糧になっているはずだ。

 GKは1つしかないポジションゆえに熾烈な争いとなることは確実。だが大迫は「切磋琢磨しながら一つのチームとして結果を出したい」と気合い十分。「目標は金メダル」と断言し、「諦めない気持ちやチームのためにハードワークするところは、どの国にも負けていない自信がある。気持ちの部分や走り負けないところはどの国より強いと思っています」と目を輝かせる。

 チームの活躍はもちろんのこと、広島で成長し、代表にまで上り詰めた大迫の躍進に期待したい。