前半戦、チームのブルペンを支えたのは栗林良吏、塹江敦哉、コルニエルら『若い力』だった。しかし、勝負のかかる後半戦、間違いなく必要になるのが、現在ファームで逆襲を期す『実績』のあるリリーバー達。果たして、彼らは後半戦の切り札となれるのか⁉

一軍復帰が待たれる今村猛投手。

◆逆襲を期すリリーバー達

 シーズン前半戦を30勝42敗10分の5位で終え、勝負の後半戦へと突入したカープ。CS圏内の3位・ヤクルトとの差も11ゲーム(前半戦終了時点)と、その差は決して簡単に詰められるものではないが、東京五輪で金メダル獲得に貢献した菊池涼介、鈴木誠也、森下暢仁、栗林良吏といった侍ジャパン組は、間違いなくチームに勢いを与えてくれるだろう。

 しかし、後半戦の巻き返しに必要なのは彼らの力だけではない。現在、二軍の由宇で汗を流し、逆襲の機会を虎視眈々と狙う実績豊富なリリーフ陣の奮起なくして、逆転優勝、CS進出はあり得ない。

 2016~2018年までのリーグ3連覇に貢献した今村猛、一岡竜司、中﨑翔太、中田廉はここ数年、そろって苦しいシーズンを送っている。セットアッパーとして一世を風靡した今村、一岡は今季一軍登板なし。クローザーとして3年連続胴上げ投手になった中﨑もわずか4試合の登板。中田は23試合に登板も防御率4.74と本調子とは程遠い出来だ。

 現在、カープの投手陣、特にリリーフ陣は世代交代の時期を迎えている。クローザーにはルーキー・栗林が君臨。セットアッパー候補で最速165キロを誇る助っ人右腕・コルニエルも26歳とまだ若い。彼ら以外にも森浦大輔、塹江敦哉、島内颯太郎、6月から先発に配置転換された大道温貴らはみな、20代前半の若鯉だ。彼らの奮闘もあり、前半戦終了時点での救援防御率はリーグ3位の3.41。数字自体は決して悪くない。その意味で『世代交代』はスムーズに進んでいるともいえる。

 しかし、である。後半戦は負けられない試合も増え、接戦で登板するリリーバーの重責はより重くなってくる。そんな時、必要なのが『経験』のある今村、一岡、中﨑、中田といった面々だ。たとえば、現在一軍のリリーフを任されている投手を見渡した時、上位争い、優勝争いの中で、一軍マウンドに立った経験のある投手はほとんどいない。

 もちろん、栗林やコルニエル、塹江や森浦などの若い力が後半戦も必要なのは間違いない。しかし、シーズンを通して戦った経験が不足する現リリーフ陣には、やはり一抹の不安が付きまとう。シーズンが佳境を迎えれば迎えるほど、年間を通してのスタミナ維持や調整が難しくなってくるからだ。その意味でもやはり、『経験』のある投手がチームには不可欠になってくる。

 また、『世代交代』と言っても今村と一岡は30歳、中﨑は29歳、中田は31歳と、まだ老け込む年齢ではない。彼らがここ数年低迷しているのは、20代のころ、チームのために投げ抜いた勤続疲労の影響が大きいと考えられる。だがその一方、ファームでは一岡がチーム最多の33試合に登板し、今村も一岡に次ぐ30試合、中﨑も26試合とチーム登板数のトップ3を独占している。

 決して投げられないわけではないのだ。肩肘に大きな不安がなければ、あとは本来の実力を取り戻し、調整さえ上手くいけば、まだまだチームの力になれるはず。勢いのある若手リリーフ陣に、経験豊富で、本来であれば充実期を迎えるはずの30歳前後である一岡、今村、中﨑、中田らが加われば、チームのブルペンはさらに厚みを増す。

 投打の戦力を見渡した時、実績のある選手がファームに控えるリリーフ陣は、間違いなくチーム内でもっとも上積みが期待できるファクターだ。実績十分、ファームで牙を研ぐ彼らの奮起があれば、後半戦巻き返しの切り札になるに違いない。
※数字はすべて8月29日現在。

文:花田雪