一軍に欠かせないカープの主力選手の2021年の声をお届けする蔵出しインタビュー企画。今回セレクトしたのは、生まれ変わるチームを牽引する選手会長・田中広輔。2021年の春季キャンプ中に行った独占インタビューから、チームリーダーの言葉を抜粋してお届けする。
(広島アスリートマガジン2021年3月号で行ったインタビューをもとに編集)

選手会長としてチームを牽引する田中広輔選手。

◆カープに残ると決めたときから考えるのはチームのことばかり

─まずは昨シーズンのお話から伺います。田中選手にとっては、右膝手術からの完全復活を目指した一年となりました。改めて2020年のペナントレースを振り返っていただき、どんなシーズンだったと感じていますか?

「今だからこそ本音を隠さず言うと、手術したあとだったので、走攻守の守りの部分、ショートの守備をしっかりこなすことができるかどうか心配ではありました。個人成績に関しては、僕自身はもちろん、ファンの方も不満を持たれる部分はあると思いますが、ショートとして、一年間プレーできたことは手応えを感じた部分です。個人的にはそれが一番大きかったですね」

─昨年は選手会長として戦ったシーズンでもありました。プレーで貢献する以外に、チームをまとめるという大きな役割があったと思いますが、選手会長としての手応えはどう感じていますか?

「手応えがあったかと言われると、どうでしょうね……正直、手応えは感じていないのですが、自分の思いを言葉にして発信する大切さを身をもって感じた一年になりました。意識して発信するようにしたことで、もっとうまくタイミングをとれたんじゃないか、もっと良い言葉を選べたんじゃないかと感じるようになりました。そういう意味では、個人的に勉強になったことが多い一年でしたね」

─選手会長としてチームを引っ張るうえで、田中選手の前に選手会長を務めた會澤翼選手の存在は心強かったのではないでしょうか?

「會澤さんには昨年はお世話になりっぱなしでした。相談させてもらったことも数多くあります。會澤さんからバトンを渡され、選手会長をやらせてもらって思うのは、チームを引っ張る立場になって、周りを見ることがどれだけ大事で、どれだけ大変なのかをようやく痛感しました。そのことを、若い頃は分かっていませんでしたし、きっと、先輩方に迷惑をかけていたんだろうなと、今になって気付かされました。ただ、そこに気付けたことが僕にとっては成長ですし、選手会長という立場に立たせてもらえなければ分からなかったことがたくさんありました。今年も経験させていただくことで、もっと人として成長できるんじゃないかと思っています」

─昨シーズンオフの11月30日にはFA権を行使せずカープ残留を決められました。記者会見では、決断するまで悩みはあったと話されていましたが、決断したあとはどういう気持ちで過ごしてこられたのでしょうか?

「たしかに決めるまではいろいろと悩みましたが、カープに残る、来年もカープでプレーすると決めたからには、チームのためにという前向きな気持ちしかなかったですね。若い選手も増えてきましたし、チームをどう良くしていこうかという気持ちで頭がいっぱいでした」

─オフの自主トレはどのようなところに重点を置いて行われたのでしょうか?

「これは毎年のことなんですけど、やっぱり下半身ですね。しっかり走ることを意識して練習をしていました。走れなくなったら、選手としても、内野手としても、チームに貢献できないので、自主トレではそういう部分を意識して取り組みました」