2016年から一軍打撃コーチとして、強力カープ打線を構築し3連覇に貢献。2020年からは指導の場を、将来有望な若手が集う二軍へと移した。二軍打撃コーチとして、カープ伝統の育成力をどのように高めていくか。卓越した打撃論で多くの才能を育ててきた、東出コーチ独自の指導観に迫った。 ※数字はすべて8月16日現在。

林晃汰選手を指導する東出輝裕二軍打撃コーチ。

◆小園の将来を考えて甘えを許さず厳しく接してきた

─一軍打撃コーチを経て昨季から二軍打撃コーチに就任されました。どういった方針を掲げて指導されていますか?

「明確な方針は置いていません。その都度その都度、選手と話をして考えるようにしていますし、会話を重ねることで、僕自身が新しいことに気付かされることもよくあります。選手に合ったベストな取り組みを、選手とコーチが一体となって考えていくのが今のスタンスですね」

─若い選手とのコミュニケーションで意識されていることはありますか?

「選手一人ひとりの性格をいち早く把握することが大事だと思います」

─昨年同様、今年も一軍で若手選手の活躍が目立っています。今年は特に、小園海斗選手や林晃汰選手など、高卒3年目野手の活躍が印象的です。

「若い選手は、技術的な部分に関しては、何度も失敗と経験を重ねながら引き出しを増やしていくものです。ただ、小園の年代は、同学年をはじめ、年齢が近い選手も多いですから、お互いに負けられないという気持ちを持ってプレーしているのではないかと思います。特に今年の小園は、これまで以上に自覚が芽生えてきたように思います。昨年はさんざん僕に怒鳴られていましたが、今年は軽い行動や言動が減ってきたと感じています」

─どんな指摘をされたのですか?

「小園に限らず、高卒の選手は精神的にムラのある子が多いんです。気分屋と言うんですかね。気分が良い時は一生懸命やるのですが、そうでない時は真剣に取り組まないタイプが多く、小園にもその傾向がありました。なので集中力に欠けていたり、言い訳をした時は、彼のためにも厳しく接するようにしていました」

─そういう脆さの改善も含め今年は精神面が成長したと感じておられますか?

「そうですね。昨年よりはプロ野球選手らしくなってきたと思います。この世界は結果が全てですから、一軍である程度数字を残しているのはすごいことだと思います。テレビで見ていても彼のがむしゃらさが伝わってきます。それだけでも大きな成長だと思いますね」