昨年、ドラフト2位で入団し順調にステップを重ねていた宇草孔基をアクシデントが襲った。10月の試合で死球を受けて右腓骨を骨折。無念の長期離脱となった。実戦に戻ってきたのは、死球から半年ほど経過した4月30日の二軍戦。その日から宇草の新たなプロ野球人生が始まった。ケガの無念を糧にして、成長を続ける背番号38の思いに迫った。
※数字はすべて8月16日現在。

一軍定着を目指す俊足巧打の外野手・宇草孔基選手。

◆もどかしさと共に始まった一年。我慢しながらその時を待った

─春季キャンプで話を伺ったとき、右足の治りが予想よりも遅いと言われていました。どんな気持ちでケガと向き合っていましたか?

「とにかく『早く治ってくれ』という気持ちだけでした。野球をやりたいのにできない、とにかくもどかしい気持ちでいっぱいでした。キャンプの練習でできることは限られていましたが、目の前のことに集中して取り組み、やるべきことをやろうと思っていました」

─復帰は4月30日(二軍・阪神戦)。ようやく辿り着いたこの日をどんな気持ちで迎えましたか?

「久しぶりに野球の試合ができるということで、素直にうれしかったですね」

─その試合、スタメンで出場すると本塁打を放つ活躍をみせました。

「打撃練習ができるようになってから取り組んできたことが結果として出たので、この試合に限っては、ホッとしましたし、励みにもなりました」

─新型コロナウイルスの影響で一軍選手が数多く離脱した5月18日。急遽ではありますが一軍昇格。体の仕上がりはどうだったのでしょうか?

「復帰以降、体の状態を考慮して途中交代が多く、フルで試合に出ることはほとんどありませんでした。徐々に段階を上げている最中だったので、万全の状態ではなかったですね」

─ただ一軍に昇格以降、スタメン出場を果たすなどコンスタントに活躍を続けられました。印象的だったのは6月5日の楽天戦(マツダスタジアム)。田中将大投手から放ったプロ初本塁打はインパクトがありました。

「あの試合に限らずですが、スタメンで出た際は、後悔しないように、1打席目からしっかり自分のスイングをしようと心がけていました。この打席も速球に振り負けないように、ゾーンを高めに上げて待っていました。その準備が一番良い結果として表れましたし、そういった打席での取り組みを、例え打てなかったとしてもコツコツと続けてきて良かったと思いましたね」

─投手の初球を捉えて安打にする確率が非常に高く、数字にすると5割近い打率が残っています。初球から打ちにいく積極性は意識していますか?

「初球から何がなんでも打ちにいこうとは思っていません。ただ、初球から自分のスイングができるよう、準備だけはきちんとしようと心がけています。また、狙い球もある程度は決めて打席に入るようにしています」

─6月15日の西武戦(マツダスタジアム)では勝ち越し本塁打を放ち、連敗ストップに貢献しました。あの一打も手応えがあったのではないですか?

「2死から林(晃汰)が安打で出て迎えた打席でしたが、追い込まれていたので、とにかく次の打者につなごうという気持ちで打席に立っていました。ファールでもいいと割り切って振ったら本塁打になってくれたという一打ですが、8連敗を止める一本になったことは良かったですね」

─試合後には林選手と一緒にお立ち台に上がり、活躍をたたえお互いにエールを送り合う姿が印象的でした。

「林とは昨年からずっと一緒に練習してきましたし、今年あいつが三軍に落ちた時は悩む姿を見ているので、一緒に一軍の試合で活躍し、お立ち台に上がれたのはうれしかったですね」(続く)

◆プロフィール
宇草孔基 38
■うぐさ・こうき ■1997年4月17日生(24歳))■185cm/79kg 
■右投左打/外野手 ■東京都出身 ■常総学院高-法政大-広島(2019年ドラフト2位)