2016年からの球団初のリーグ3連覇をヘッドコーチとして支えた高信二。今季からは二軍監督として、カープの未来を担う若手育成に取り組んでいる。脈々と受け継がれる『育成のカープ』の伝統を二軍の現場でどう活かしているのか。数々の新戦力を一軍へと送り続ける高二軍監督に若手育成論について聞いた。
※数字はすべて8月16日現在。

リーグ3連覇の経験を活かし育成に取り組んでいる高信二・二軍監督

◆やらされる練習からの脱却

─2015年にも二軍監督の役目を担われました。今シーズンは6年ぶりの二軍監督就任となりましたが、前回の時と比べて心境面の変化はありますか?

「選手への接し方、指導法は変わったと思います。2015年はかなり厳しく指導していましたから。ただ、今の時代は、指導者が押し付けて選手にやらせる練習よりも、選手自らが考えて自主的にやる練習のほうが、成長も早いと感じています。今季、二軍監督に就任した際、二軍打撃コーチの東出(輝裕)コーチと森笠(繁)コーチから『若い選手は放っておいても、試合後も大野寮に帰ってからも自主的にバットを振っています』と聞き、それなら選手が自主的に考えて取り組む練習に変えていこうと思いました。前回は、若い選手に〝やらせないといけない〟という考えでしたから、意識も含めて指導法は大きく変わったと感じています」

─練習に対する選手へのアプローチが大きく変わったということですね?

「そうですね。こちらから、これをやりなさいではなく、選手が取り組んでいる練習に寄り添うというスタンスですね」

─2016年から一軍ヘッドコーチとしてリーグ3連覇に貢献されました。強い時代を支えてきた経験も考えの変化につながっていますか?

「それはあると思います。3連覇した頃のチームは、選手一人ひとりが考えて野球をやるという雰囲気がありましたし、結果も残しました。もちろん一軍と二軍で違いはありますが、そういう育成のほうがチームとしても強くなるのではないかという考えを持つようになりました」

─二軍監督として、どうカープを支えていこうと考えておられますか?

「一番大切なのは一軍で誰かがケガをしたり不調になった際、それに代わる選手をすぐに補充できるようにすること、それが二軍の役割だと思っています。今で言うと、打者は堂林翔太、正隨優弥。投手では今村猛、中﨑翔太、一岡竜司あたりがその候補になってくると思います。特に優勝経験のある3投手に関しては、もう一度一軍で活躍してほしいという思いを込めてチャンスを与えています。彼らのおかげで優勝の美酒を味あわせてもらえただけに、なんとか球威を取り戻して復調を果たしてほしいですね」

─選手時代、指導者になってからも由宇での時間を経験されています。高監督にとって由宇球場はどんな場所ですか?

「現役時代の思い出はファールゾーンの広さ。昔は今より広かったんです。それだけに打球を後逸してはいけない、カバーリングも的確にしないといけないという思いがありました。ただ、その意識を植え付けてもらったからこそ、緊張感のある一軍の試合でもしっかりとプレーできたのだと思います。選手にとっては、移動を含めて大変だと思いますが、マツダスタジアムでプレーするための鍛錬の場であり続けてほしいと思います」

◆プロフィール
71 高 信二(こう・しんじ)
1967年4月16日生、福岡県出身。1985年ドラフト2位でカープに入団。3年目から一軍に定着すると、堅守を武器に内野のユーティリティープレーヤー、左の代打として活躍。1998年限りで現役を引退。引退後は一軍コーチ、二軍監督を歴任し、2016年から一軍ヘッドコーチとして、リーグ3連覇を支えた。2021年から二軍監督に就任。