一軍での活躍が期待されるカープ選手の2021年の声をお届けする蔵出しインタビュー企画。今回取り上げるのは、エースへの階段を一歩ずつ上がっている森下暢仁。後半戦、まだ勝ち星がないだけに復調が期待されている。2021年4月に行ったインタビューから、東京五輪でも活躍した2年目右腕の言葉を抜粋してお届けする。
(広島アスリートマガジン2021年5月号で行ったインタビューをもとに編集)

新人王を獲得した昨年以上の成績に期待がかかる森下暢仁投手。

◆新人王の実績を引っさげ飛躍の2年目に向け死角なし

─ルーキーイヤーの昨年は二桁勝利を達成し新人王を獲得されました。森下投手にとってどんな1年でしたか?

「まず思うのはファンのみなさんの存在の大きさを感じた1年だったことです。無観客試合から始まって、途中からお客さんが入っての試合開催となりましたが、ファンの方々の声援が力に変わるということを身をもって感じました。また、シーズン途中に一度離脱はしましたが、1年を通して一軍に帯同させてもらい、チームにもだんだんと溶け込むことができました。本当にいろんな経験をさせてもらった1年でした」

─プロとして初めて臨むシーズンだっただけに疲れも大きかったのでは?

「もちろん疲労を感じる時期もありましたが、トレーナーさんの支えもあり、良い状態でシーズンを乗り切ることができたかなと思います。初めての経験だったので、とにかく一日一日を大切にやっていこうという意識をもって過ごしていました」

─昨年は8月以降に8勝を挙げる活躍。一気に勝ち星を伸ばしました。特に10月・11月に4勝を挙げ、その間の防御率は0・24の圧巻の成績でした。開幕当初とシーズン後半で投球スタイルや考え方の部分で変えたことはありますか?

「シーズン前半は、何も分からずとにかく必死に投げているだけでした。ただ、後半になるにつれ、同じチームとの対戦が増えていくなかで、前回の借りを返したい、負けたくないという気持ちと、新人王を獲りたいという気持ちが投球に影響を与えたのかなと思います。あとは、とにかくチームが勝てるために、しっかりと良い準備をして試合に臨むことは強く意識してやってきました」

─森下投手の投球内容を見るとストレートの比重が多い印象です。使い方で意識されていることを教えてください。

「ストレートでカウントを稼ぐことができるかが、その日の自分の調子を測るバロメーターの一つになっています。打者に怯まず向かっていくという意味でも大事な球だと思っています」

─2年目に向けて、オフはどんな課題を持って取り組んでこられましたか?  

「オフは初めてで、どんなことをやったらいいのか分からなかったので、カープの先輩の方々と一緒に自主トレをやらせてもらいたいと思っていました。2年目も結果を残さないといけないなかで、自分の足りない部分を考え、練習に対する意識を高く持ち、シーズンに向けて取り組んできました」

─鈴木誠也選手の自主トレにも参加されました。これはどういう意図で参加されたのでしょうか?

「最初は(大瀬良)大地さんと一緒にやらせてもらいたいと思っていたのですが、大地さんがケガ明けだったため、誠也さんと堂林さんに相談して、こちらに参加させていただくことになりました。一人で広島でトレーニングするよりは、得るものが大きいと思いましたし、あと、マエケン(前田健太・ツインズ)さんも自主トレ地の沖縄にいると聞いたので、一緒に行かせてもらいたいとお願いしました」

─自主トレを経てからの春季キャンプ。新たに取り組まれたことはありますか?

「新しい変化球を試したりもしましたが、一番は、いま自分が試合で投げている球種のレベルアップを意識してやってきました」

─ストレート、カットボール、チェンジアップ、カーブの4球種ですね。

「プロに入る前から全球種をしっかり投げることを意識していましたが、昨年のシーズンを通して感じたのは、まだまだコントロールできていない部分があるということです。その部分を今年の春季キャンプでレベルアップさせたいと思っていました。感覚的なところではある程度、キャンプ中につかむことができたので、一つひとつステップアップはできているのかなと思っています」

─先ほどの4球種のなかで良くなったと手応えを感じている球種はありますか?

「一つの球種にこだわるつもりはなく、全てが勝負球でもあるので、そこは全球種に手応えを感じています」

─昨年はドラフト1位で入団し、エースナンバーでもある背番号18を託されたこともあり、重圧も大きかったと思います。その重圧に打ち勝つためにどんな意識でシーズンを戦っていましたか?

「18番をいただいた責任感は感じていましたが、1位入団だからどうこうとは深く考えていませんでした。周りに大地さんや(九里)亜蓮さん、明治大の先輩でもある(野村)祐輔さんというすごい投手がいるので自分はその先輩たちについていこう、そんな気持ちでいました。ドラフト1位だから、18番だから自分が引っ張っていこうという気持ちはなかったですね。先輩方のおかげで、自分の仕事をすることに集中できました」

─昨年、新人王に選ばれただけに、今シーズンはどうしても“2年目のジンクス”という言葉がついて回りそうです。

「言われるのは仕方ありません。自分としては、できることをやって結果を残すことしか考えていません。ただ、結果がついてこなければそういうことを言われてしまうと思うので、昨年と同じように、とにかく良い準備をして登板に臨みたいです」

─1年目と同じく準備が大切だと?  

「そうですね。やるべきことは変わりませんから。やって結果が出なかったら単純に自分の力不足だと思うので、特に重圧は感じていません。自分ができることをやるだけです」

◆プロフィール
森下暢仁 18
■もりした・まさと ■1997年8月25日生(24歳)■180cm/77kg   
■右投右打/投手 ■大分県出身 ■大分商高-明治大-広島(2019年ドラフト1位)