今季のカープはBクラスを推移するなど、低空飛行が続いている。そんなチーム状況だが、坂倉将吾、小園海斗、林晃汰など若手の台頭が目立つなど明るい材料もある。

 そんな打線の中で4番に君臨しているのが、東京五輪野球日本代表で金メダル獲得に貢献した鈴木誠也だ。9月25日時点で打率.317はリーグトップの数字であり、9月に入り本塁打を量産し、自己最多の30本まであと1本としている。順調にシーズンを終えれば、6年連続の“打率3割、25本”も達成するだろう。

 ここでは、「ミスター赤ヘル」山本浩二氏がかつて本誌(『広島アスリートマガジン』2018年8月号)で語っていた“4番打者論”を振り返り、改めて4番打者を考える。

カープ監督時代に江藤智、金本知憲、新井貴浩らを4番に育て上げた山本浩二氏(写真は2018年)

◆長距離砲、精神的強さ、リーダーシップが必要

 現役引退後は監督として、江藤智、金本知憲、新井貴浩らを4番打者として育成してきました。私が監督として4番育成をするにあたり、まずは4番としての資質がある選手を重点強化選手に位置付けることから始めていました。

 そして、コーチ陣に彼らを預けて、徹底的に鍛え上げてもらいました。私が考える4番の資質を持った選手は長距離砲であること、精神的な強さを持っていること、そしてリーダーシップを見せることができる。最低限これらの要素が必要になると考えています。

 監督として4番打者を育てる上で、最も大事なのは我慢です。中でも特に印象に残っているのは新井です。2003年、金本がFA移籍したことで彼を4番に抜擢したのですが、2年間は全く成績を残すことができませんでした。今思い返してみれば、少し可哀想なことをしたかもしれません。

 しかしながら、当時のチーム事情と将来を考えたときに、無理にでも4番として使い続けなければならないと感じていました。新井もそこからいろいろな苦労がありましたが、それを乗り越えて2年後の2005年には本塁打王を獲得するまでになり、その後は不動の4番へと成長してくれました。少し時間がかかったかもしれませんが、あの苦しい2年間は彼にとって良い経験になっているはずです。

 4番として、打てることもあれば、打てずに失敗して反省することだって数多くあります。いつも状態が良いということは絶対に有り得ないことですし、打てなかったときに、いかに反省をして、同じことを繰り返さないか。それが大事になってきますし、その繰り返しです。

 たとえば4打数3安打打ったとしても、凡退した1打席をいかに反省するか。そこで満足していては4番としての成長はありませんし、常に反省をすることが大事です。それほど4番には甘えが許されないですし、チームの勝敗の責任を負う、重要なポジションなのです。