往年の名左腕・大野豊氏がカープ投手陣の行方について語るコラム。今回は、ドラフト1位で入団し、カープの守護神に成長した栗林良吏を取り上げる。※取材日は9月上旬。

開幕から大車輪の活躍を続ける栗林良吏投手。プロ1年目だけに疲労感を残さない投球が今後の鍵となる。 

◆栗林の強さを垣間見るメンタル・投球術の強さ

 シーズンも残り少なくなりました。ルーキーながら40試合以上投げている栗林良吏は、東京五輪を経験したことで、目に見えない疲れもあると思います。しかし、守護神として無失点投球を続けています。

 登板を見るたびに、メンタル的にも体力的にもタフで、改めて強い投手だと感じています。持ち球であるストレートとフォークは、彼がアマチュア時代にいろいろな経験を積むなかで武器として身につけた球で、プロの世界でさらに磨きをかけています。

 聞いた話によると、栗林は投げる時のルーティンが多いそうですが、かつて前田健太が登板前にマエケン体操をしていたように、個人個人それぞれでルーティンはあっていいと思います。私自身も、現役時代は、マウンドに行くまでに左足でファールラインをまたいでいました。またストッパーの時は、投げる時に息を吸って、吐いて、1つ間を置くという自分なりの呼吸法を取り入れて気持ちを落ち着かせていました。

 守護神に大切なのは気持ちの部分です。マウンドではどうしても、その日の自分の状態の良し悪しや、過去に打たれた打者への悪いイメージなどを考えがちです。ですが、マウンドに上がれば、自分を信じるしかありません。“自分の球を信じて、とにかくバッターを強気で攻める”、そういった強い気持ちで、一球一球を投げられるかどうかが大切です。

 もう一つ、クローザーとして絶対大事なのが、ウイニングショットとなる球を持っているかどうかです。相手打者が『この球が来たら嫌だな』と思わせるような球をいかに投げられるかです。

 栗林はフォークでストライクも空振りも取れることが何よりの強みです。加えて速球、カーブ、カットボールがあります。そういう球種を織り交ぜて三振を奪っています。数字的に見ても、奪三振率は高い数字を記録しています。ベンチとしても、僅差やランナーを背負ったピンチの場面で、三振を取れる投手がクローザーにいると安心感があるでしょうね。

 シーズン終盤を戦ううえで、特に気をつけてほしいのは疲労との付き合い方です。プロ1年目だけに、疲れは相当あるのではないかと思います。それだけに、球数を減らすと同時に四球を出さず、自分への疲労感を残さないことを意識してほしいですね。それについては、栗林自身も、プロでいろんな経験を積んでいくなかで、感じている部分ではないかと思いますね。