今シーズン、ここまでの登板で救援に失敗したのはわずか1度。脅威のリリーフ成功率を誇る栗林良吏。東京五輪では侍ジャパンのクローザーに抜擢され、悲願の金メダル獲得に大きく貢献した。  

 わずか1年足らずで世界中に広まった『栗林』の名。ゼロを刻み続ける右腕が打ち明けた東京五輪でのエピソードを紹介する。※取材は9月上旬。

カープの守護神として、東京五輪でも活躍した栗林良吏投手。

◆田中将大が指摘した栗林良吏の癖

─本誌では4度目のインタビューとなります。今回は日本中が熱狂した東京五輪の話から伺っていきます。カープ同様に、日本代表でもクローザーを任されると全5試合に登板して2勝3セーブの成績を残され金メダル獲得に大きく貢献されました。五輪での登板を通して得たことや学んだことを教えてください。

「まず、DeNAの(山﨑)康晃さんから登板に向けての準備の仕方について、いろいろアドバイスをしていただきました。その中で康晃さんが言われていたのは『ベンチに入っている以上、どんな状況であっても、必ず出番があると思って準備をすること』が大切だということです。準備がきちんとできていれば、思わぬ形で登板が巡ってきたとしても自分の球を投げることができると思うので、そこはしっかり取り組もうと改めて思いましたね。もう一つ勉強になったのは、ウエイトトレーニングの捉え方です。これまで僕は、試合に影響が出ないようにウエイトのメニューをこなしていましたが、千賀(滉大)さんから、『ウエイトはその日のためではなくて、2年後、3年後のためのもの。将来のために今頑張っておいたほうがいいよ』と言われ、カープに帰ってきてからは、ウエイトにもこれまで以上に取り組むようになりました」

─日本代表合流前のインタビューでは「日本を代表する選手が集まるので話を聞くのが楽しみです」と言われていました。その他に選手とのやりとりで印象に残っているものはありますか?

「田中(将大)さんから『どれだけ小さくても、癖はすぐにバレてしまうから、できるだけ癖のない投球フォームにすることが大切』だと言われたことも印象に残っています。また、僕のフォームを見たとき『二塁にランナーがいる時は、セットポジションの位置を変えたほうがいいかもしれないね』とアドバイスをしてくださったので、改善したほうがいいと思う部分は反映していきたいと思います」

─日の丸のユニホームを身に纏ってのクローザーの仕事は、相当な重圧だったと思います。プレッシャーとはどう向き合っておられたのでしょうか?

「東京五輪は無観客での開催だったので、プロ野球のシーズンとは違った緊張感がありました。ただそこまでめちゃくちゃプレッシャーを感じるということはなかったです。シーズン中の試合より緊張した試合もあれば、逆に落ち着いて投げることができた試合もあります。あとは、例え自分が打たれたとしても、他に素晴らしい投手がそろっていると思えたのも大きいですね。1イニング全てを投げ切るというよりかは、1人でも多くの打者からアウトを奪うという気持ちでマウンドに上がっていました。その意識が、こみ上げてくるプレッシャーを少しは抑えてくれたのかなと思います」