CS出場を目指し、1敗も許されない戦いが続くカープ。シーズン終盤、怒涛の追い込みの立役者となっているのが4番・鈴木誠也だ。チームのCS出場はもちろん、自身2年ぶりの首位打者、初の本塁打王と、打撃タイトルの行方からも目が離せない。
◆カープには「勝つ戦い」が求められる
一時は3位・巨人に15ゲーム差をつけられ、絶望的とみられたCS出場に一縷の望みが残されているカープ。
10月22日時点で残り5試合、一戦も落とせない薄氷を踏む戦いが続くが、チーム成績と同様に目が離せないのが不動の4番・鈴木誠也が絡む“個人タイトル”の行方だ。
ここまで、打率.322で2位の近本光司(阪神)に9厘差をつけてセ・リーグ首位打者。本塁打38本は村上宗隆(ヤクルト)、岡本和真(巨人)に1本差の2位と、“打撃二冠”が射程圏に入っている。
首位打者に関して言えば、残り試合を考えると大ブレーキでもない限りは獲得できる公算は非常に高い。
問題は、本塁打王だ。事実上、村上、岡本、鈴木誠也の3人に絞られたタイトル争いだが、残り試合数を見るとヤクルトと広島が5試合、巨人が2試合と、本塁打数トップタイで試合数も多い村上が最も有利な状況にある。
ただ、現在に至るまでの本塁打ペースを見ると、見方は少し変わってくる。以下、3選手の月間本塁打数を見てほしい。
◎村上宗隆
3月 2本
4月 8本
5月 4本
6月 10本
7月 2本
8月 5本
9月 7本
10月 1本
◎岡本和真
3月 0本
4月 5本
5月 9本
6月 9本
7月 4本
8月 5本
9月 6本
10月 1本
◎鈴木誠也
3月 0本
4月 6本
5月 1本
6月 3本
7月 5本
8月 4本
9月 13本
10月 6本
村上、岡本のふたりがコンスタントに本塁打を積み重ねてきたのに対し、鈴木誠也は9月以降、40試合で19本塁打とほぼ2試合に1本のペースで一気に量産モードに入っている。
この勢いを考えれば残り5試合とはいえ、逆転での本塁打王獲得の可能性は十分あるだろう。
カープの選手が本塁打王を獲得すれば、2014年のエルドレッド以来7年ぶり、日本人では2005年の新井貴浩以来、16年ぶりになる。
加えて注目したいのが、首位打者&本塁打王の“変則二冠”獲得だ。
相関関係の強い本塁打&打点の二冠はそこまで珍しくないが、首位打者&本塁打王となるとセ・リーグでは1992年のハウエル(ヤクルト)以来、実に29年ぶり。パ・リーグも含めると2004年にソフトバンクの松中信彦が三冠王を獲得して以来、17年ぶりになる。
ちなみにカープでは過去、首位打者&本塁打王のダブル獲得者はゼロ。6年連続の打率3割&25本塁打という偉業が確実視される中で、またもチームの歴史にその名を刻むかもしれない。
しかし、タイトル獲得にはもちろん障壁もある。
残り5試合のうち4試合が、優勝を争っているヤクルトと阪神との対戦となっており、絶好調の鈴木誠也には厳しいマークも予想される。状況次第では勝負を避けられるケースも出てくるはずだ。
また、ヤクルトには村上、阪神には近本と、タイトル争いのライバルもいる。3チームともに優勝争い、順位争いが絡んでくるため、露骨な敬遠合戦が起こることはなさそうだが、厳しい試合が続くのは間違いない。
鈴木誠也自身にとっても、「負けられない戦い」が続くだけに個人タイトルだけを狙ったバッティングは出来ないはずだ。
しかし、負けられない戦いの中で打ってこそ、タイトルには真の価値があるとも言える。
シーズン終盤までCSを争う中で、4番として自らのバットでチームの勝利と、タイトルを手繰り寄せることができるか――。
残り5試合、カープ、そして4番・鈴木誠也の打棒から、目が離せない。