10月14日、カープ球団から「来季契約を結ばない」と発表された6選手の中に、ドラフト5位ルーキー投手・行木俊の名前があった。そして行木については「育成選手として契約の方針」とあった。

プロ1年目、二軍で1試合登板に終わった行木。

 栗林良吏の単独1位指名が話題となった昨季ドラフト会議で5位指名を受けた。昨季カープドラフト指名選手の中で唯一の独立リーグ出身(徳島インディゴソックス)の行木は、徳島での短期間で大きく成長を遂げた投手だった。

 本格的に投手を始めたのは千葉・横芝敬愛高の3年時で、当時は140キロに満たない投手だった。

「自分は大学からの誘いはなくて、あったのは独立リーグからだけでした。『プロを目指す以外で野球はやらない』と決めていたので、覚悟を持って独立リーグに進みました」

 強い決意を持ち、徳島に入団したが、初年度は故障に泣き公式戦登板なし。独立リーグでの初登板は2年目の6月だった。

「6月の試合ではほとんどが130キロ台でした。食トレやジムでのトレーニングなど、出来ることをどんどん試しました。いろんなものを積み重ねたことで、シーズン後半には球速が150キロ近くまで出るようになりました」

 自分でも驚くほどの球速の伸びを見せ、結果的にドラフト5位でカープからの指名を勝ち取った。体力強化を中心に調整を続けていく中で、4月3日にはファームでの阪神戦で初登板を果たした。1回11球を投げて1安打無失点、球速も140キロ台中盤を記録するなど上々のデビューだった。

 しかし、その後は故障の影響でファームでも登板することができなかった。そして迎えたプロ初のオフ直前、1年目ながら“来季契約を結ばない”と通告を受けるも、育成契約として再びプロの世界でチャレンジするチャンスを得た。

 独立リーグ1年目も故障に泣いたが、2年目で大きく飛躍を見せた行木。プロ入り直後に「そのときの経験がいま活きています」と語っていた。素材型投手としての指名の見方も強かっただけに、今後の伸び代も期待できる。1年目から味わったこの悔しさを糧に、来季の逆襲が期待される。