胃がんを克服して現役生活を続けた赤松真人。現在はカープの二軍外野守備・走塁コーチとして若手育成に励んでいる(写真は2019年撮影)。

◆病に屈しない選手たちの姿

 プロ野球という厳しい世界の中で、病気を抱えながらも闘い続ける選手たちがいます。

 広島の野球ファンのみなさんは、2019年に引退された赤松真人さんのことが真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。胃がんを克服して再起を目指す姿は、多くのがん患者の方々に勇気を与えたことと思います。

 メディアに出演した際などには、がん検診を受けることの大切さも熱心に発信されていました。がんを経験して「まさか自分が」という思いを抱いたこともお話されていましたが、それは今健康に過ごしている方々にとっても大きな啓発になったのではないでしょうか。赤松さんのメッセージがあったからこそ検診に行くようになった、もしくは早期発見できて助かったという方もいらっしゃるかもしれません。

 現役選手でいえばオリックスの安達了一選手。彼はプロ5年目のシーズン前に潰瘍性大腸炎を発症しました。以前、安達選手にインタビューした際、「まさか自分が難病指定されている病気になるなんて思ってもみなかった。野球ができなくなるかもしれないと思った」とその時の心境を語ってくれました。

 闘病中はファンの方々や同じ病気の方から手紙がたくさん届いたそうで、それが何より励みになったとのこと。その感謝の思いを込めて、今シーズンから公式戦の出場試合数ごとに一万円を積み立て、『特定非営利活動法人日本炎症性腸疾患協会』に寄付することにされたそうです。

 潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患は子どもの患者さんも増えているとのことで、自分が試合に出ている姿が子どもたちの励みになればという思いがあったといいます。こうして自身の病をマイナスな経験で終わらせることなく、検診の大切さを発信したり、支援団体への寄付を行ったりとプラスの行動に変えていく姿勢は、元気にプレーする姿を見せてくれるのと同じくらい、私たちに熱い思いを抱かせてくれます。

 

岡田真理(おかだ・まり)
フリーライターとしてプロ野球選手のインタビューやスポーツコラムを執筆する傍ら、BLF代表として選手参加のチャリティーイベントやひとり親家庭の球児支援を実施。出身県の静岡ではプロ野球選手の県人会を立ち上げ、野球を通じた地域振興を行う。著書に「野球で、人を救おう」(角川書店)。