スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 2年連続最下位からのリーグ優勝とは恐れ入る。セ・リーグを制したのはノーマークの東京ヤクルトだった。

 ネット上に<2021プロ野球 解説者による順位予想>というサイトを見つけた。

 ほとんどの評論家が参加しているのだが、セ・リーグ優勝予想は1位が巨人で55%、以下、阪神34%、広島6%、中日5%、横浜DeNA1%と続いた。0%、すなわち0票の球団がひとつだけあり、それがヤクルトだった。

 勝因のひとつがチーム防御率だ。19年=4.78、20年=4.61と2年連続でリーグ最下位だったチーム防御率はリーグ3位の3.45(10月28日現在。以下同)にまで改善されている。

 ここまで改善されたのには理由がある。19年=473、20年=404だった総与四球数が357にまで減ったのだ。これはセ・リーグで最も少ない数字。では一番多いのはどこか。残念ながらカープで474も与えている。

 私見を述べれば、カープのピッチャーがヤクルトのピッチャーに比べ、極端にコントロールが悪いとは思えない。にもかかわらず、リーグ最多の四球を与えている原因は、どこにあるのだろう。

 監督の高津臣吾は、現役時代、“遅いシンカー”を得意にしていた。100キロ台の球速だが、マウンド上で「絶対に打たれない。打たれるはずがない」と自らに言い聞かせていたという。

 この高津イズムが、就任2年目の今季、チームに浸透していた。打者を早めに追い込み、有利なカウントからウイニングショットを投げ込むのだ。クローザー高津の現役時代のピッチングを見ているようだった。下剋上の立役者は、誰あろう監督その人だった。

(広島アスリートアプリにて2021年11月1日掲載)

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。