レギュラーシーズンも終わり、個人タイトルも確定した。そんな中、カープファンにとって今もっとも気になるのが「新人王争い」の行方だろう。果たしてカープのルーキー・栗林良吏はライバルたちを凌ぎ切り、「ルーキーの頂点」に立つことが出来るのか⁉

新人王獲得の期待がかかる栗林良吏投手。

◆栗林は新人王を獲得できるのか!?

 日本シリーズ進出をかけたクライマックスシリーズが始まった。残念ながらカープは今季、セ・リーグ4位に終わって全公式戦を終了。チームとしては満足いく結果を残せなかったが、個人では鈴木誠也が首位打者と最高出塁率の二冠、九里亜蓮が自身初の最多勝のタイトルを獲得した。

 しかし、これで終わりではない。

「個人タイトル」とは別に、12月15日には「表彰選手」がNPBから発表される。そこで最注目なのがセ・リーグの新人王争いだ。今季、カープではドラフト1位ルーキー・栗林良吏が開幕からクローザーとして奮闘。年間通して守護神の座を守り切った。例年ならば「新人王当確」と言っていいが、今年は違う。なぜなら、栗林以外にも圧巻の成績を残したルーキー、有資格者がリーグ内にひしめいているからだ。

 参考までに、以下に主な「新人王候補」と今季の成績を列挙してみよう。

◎栗林良吏(広島/1年目)53試合 0勝1敗37S 防御率0.86 投球回52回1/3 奪三振81
◎牧秀悟(DeNA/1年目)137試合 打率.314 本塁打22 打点71 安打153 盗塁2
◎佐藤輝明(阪神/1年目)126試合 打率.238 本塁打24 打点64 安打101 盗塁6
◎中野拓夢(阪神/1年目)135試合 打率.273 本塁打1 打点36 安打127 盗塁30
◎伊藤将司(阪神/1年目)23試合 10勝7敗1H 防御率2.44 投球回140回1/3 奪三振79
◎奥川恭伸(ヤクルト/2年目)18試合 9勝4敗 防御率3.26 投球回105回 奪三振91

 数字を見るだけでも「史上最高レベル」の争いと言っていい。では果たして、栗林は新人王を受賞できるのか――。

 新人王は新聞、通信、放送各社に所属するプロ野球担当記者による投票で選考されるが、カギとなるのが「数字」と「印象度」だ。

 今回はこの2項目に「チームの躍進への貢献度」を加えた3項目から、栗林の新人王獲得の可能性を探ってみよう。

■数字で見る新人王争い
〜歴史的な数字を残した栗林&牧が一歩抜けた存在〜

◎栗林良吏
○牧秀悟
▲中野拓夢

 本命・栗林、対抗・牧としたが、正直言って両者にほとんど差はない。栗林が記録した37セーブはNPB新人記録タイであり、防御率0.86は「新人」の肩書を取っ払ったとしても超一流の数字。最多セーブはスアレス(阪神)が獲得したが、安定感でいえばセ・リーグナンバーワンのクローザーだったと言っても過言ではない。

 一方の牧も打率.314は新人歴代3位。新人による打率3割&20本塁打はあの清原和博(西武)以来、35年ぶり4人目の快挙だった。ともに「歴史に名を残す」レベルの成績を残しただけに、「数字」の面では甲乙つけがたいが、シーズン最終戦で新人セーブ記録に並んだこともあって、栗林に◎印をつけた。

 中野は新人では唯一、個人タイトルの盗塁王を獲得しているが、数字自体は30盗塁と決して突出したものではなかったので、このふたりには及ばないだろう。

■印象度で見る新人王争い
〜前半戦だけなら佐藤輝だが、“侍のクローザー”のインパクトは絶大〜

◎栗林良吏
○佐藤輝明
▲牧秀悟

 残した数字と同じくらい、投票の行方を左右すると言われる「印象度」。ここは、栗林が一歩リードか。

 開幕から新人記録となる22イニング連続無失点を記録し、シーズン終盤には歴代2位の20試合連続セーブをマークするなど、節目節目でインパクトのある「記録」を樹立。また、本拠地・マツダスタジアムでは27イニングを投げて無失点というパーフェトクトな数字を残した。さらに大きいのが東京五輪での活躍だろう。新人ながら侍ジャパンに選出され、クローザーに抜擢。5試合に登板し2勝3Sという圧巻の働きぶりを見せ、金メダル獲得に貢献。ちなみに、新人王有資格者で東京五輪に出場したのは栗林だけ。この点でも他候補を一歩リードしている。

 一方、佐藤輝は前半戦のインパクトだけなら間違いなく「新人王候補筆頭」だった。西武戦での1試合3本塁打(新人では長嶋茂雄以来)など、規格外のアーチを量産。一時は新人記録のシーズン31本塁打を更新する勢いだったが、中盤以降の大失速が痛かった。牧も新人初のサイクルヒットを記録し、シーズン最終盤に5打席連続二塁打のNPB記録を作るなど奮闘したが、「印象度の強さ」ではやはり及ばない。