11月16日、カープの鈴木誠也(27)がポスティングシステムでのメジャー挑戦を表明した。カープの主軸として6年連続打率3割、25本以上を達成し、侍ジャパンの4番として東京五輪では金メダル獲得にも貢献。日本を代表するスラッガーを巡り、メジャー複数球団による争奪戦が予想される。

2012年12月13日、入団会見時の鈴木誠也選手

 二松学舎大付高から2012年ドラフト2位でカープに入団して以来、鈴木は順調に結果を残し、プロ4年目に「神ってる」活躍で大ブレイク。その後は3連覇を果たしたチームの若き4番として打線を牽引してきた。

 ここでは、日本を代表する打者へ成長するまでの鈴木のプロ9年間の軌跡を辿る。今回は2012年ドラフト2位で指名され、2012年12月に行われた入団会見を改めて振り返っていく。

◆自分にプレッシャーをかけてやりたいです

 2012年当時、ドラフト前は大谷翔平(花巻東高・現エンゼルス)、藤浪晋太郎(大阪桐蔭高・現阪神)ら高校生に注目が集まっていた。迎えたドラフト当日、カープは将来性豊かな左腕投手・森雄大(東福岡高・現楽天)を1位指名。しかし、楽天と重複し抽選の結果、交渉権の獲得に失敗した。

 改めて即戦力右腕の増田達至(NTT西日本・現西武)を外れ1位で指名したが、ここでも西武と重複し交渉権を得ることはできず。2回連続で投手の指名に失敗したカープは軌道修正を図り、右の長距離砲として高く評価していた髙橋大樹(龍谷大平安高)を1位指名で獲得となった。

 そして2巡目。カープは“尾形佳紀スカウトが強く推薦”した二松学舎大付高の鈴木誠也を内野手として指名。このドラフトでは髙橋大樹、鈴木誠也、美間優槻と3人のスラッガータイプの高校生を指名することとなった。

 2012年12月13日、広島市内で行われた入団会見で鈴木は初めてカープのユニホームに袖を通し、関係者、ファンの前で目標を語った。

「二松学舎高校から来ました、鈴木誠也です」

 短く刈り込んだヘアスタイルに学ラン姿の鈴木は初々しく、力強く第一声を発した。その後、目標とする選手を問われると、隣に座る当時の野村謙二郎監督の前で堂々とこう言った。

「野村監督です。トリプルスリーを達成されている方なので。トリプルスリーを達成したいです。野村監督は目標とする記録を達成した選手ですし、憧れです」

 その瞬間、野村監督は笑みを浮かべながら「だいぶ上手を言ってくれているようで、僕がしたときは見ていないと思う。でも、そうなれるようにしてほしいし、逆になれる逸材だと思います」と期待を込めた。

 与えられた背番号は51。同じ鈴木姓のイチロー氏(現マリナーズ会長付き特別補佐兼インストラクター)が背負った番号であり、球団ではかつて江藤智、前田智徳らが背負っていた番号だ。

「何年ぶりになるか分からないけど、自分にプレッシャーをかけてやりたいです」

 希望に満ち溢れた18歳の青年は“トリプルスリー”という大きな夢を抱き、広島でのプロ生活をスタートさせた。