カープの鈴木誠也(27)がポスティングシステムでのメジャー挑戦を表明した。6年連続打率3割・25本以上を記録したNPB屈指のスラッガーを巡って、メジャー複数球団による争奪戦が予想される。

2016年春季キャンプ時の鈴木誠也選手。自主トレでは内川聖一に弟子入りした。

 ここでは、日本を代表する打者へ成長するまでの鈴木のプロ9年間の軌跡を辿る。今回はプロ4年目の2016年の春季キャンプ時のインタビューから。このシーズンに大ブレイクを果たすことになる鈴木が、どのような思いで開幕を迎えようとしていたか? をお送りする。

◆日本一の右打者に弟子入り

─昨季の秋季日南キャンプでは、かなり厳しい練習をこなしていました。

「二度とやりたくないくらいキツかったですね(笑)。バットを振ることは基本的に嫌いではないのですが、バットを持ちたくなくなるくらい厳しかったです。手の芯が痛いという感覚になっていました。短期間であれだけ球を打つというのは、人生の中でも経験がなかったです(苦笑)」

─秋に得たものはありますか?

「厳しい練習の中でも、『どうやればケガをしない』とか『どうすれば、疲れていても力を出せるか』ということを常に考えながらやっていました。要領良くというか、『いかに楽をして打球を飛ばすか? 打球に追いつくか?』ということが少しは身についたのではないかと思います」

─1月の自主トレでは、ソフトバンクの内川聖一選手(現ヤクルト)と練習をされました。

「内川さんに憧れがありましたし、日本一の右打者だと思っています。そんな方に見てもらいたいし、『どういう意識で練習をしているのか?』というものを自分の目で見たくて、5月くらいから小窪(哲也)さんだったり、琢朗さん(石井・当時一軍打撃コーチ)に相談して、実現することができました」

─打撃は、どのようなアドバイスを受けられたのですか?

「僕は球を捉えたときに、左ひじが外に逃げる癖があって、うまく力が伝わらず、スライスする打球が多くありました。そこで内川さんから『体の中で打球を捉えろ』と言われ、『静態しているくらいの気持ちで打て』とアドバイスをもらいました。個人的に分かりやすかったのが、〝昆虫の蝶は4つ羽があって、それぞれ違う動きをして飛んでいる〟というお話を聞きました。野球も一緒で、きれいに体を動かしているだけでは打てなくて、『全てが違う動きをして一つの作品になって良い打球が打てる』と教わりました。その動きを意識しながら、どうやれば僕に合う打ち方になるのかということを以前よりも考えるようになりました」

─それは今までにない感覚だったのですね。

「一つの引き出しとして今までにない感覚ですね。内川さんと同じ打ち方はできないですし、何年も積み重ねてきて内川さんの打撃があると思います。短期間で教わった技術を習得することは無理なので、新しい自分の考えとして持っておこうと思っています」

─他球団の選手と練習をしたことは、どのような印象でしたか?

「初めての経験だったのですが、すごく新鮮でした。いろんな球団の話を聞けたりして面白かったですし、ソフトバンクの上林(誠知)は年下ですが良い選手ですし、負けたくないという気持ちも湧きました。内川さんも若手に負けないくらい体を動かしていたので、走る面では僕は負けちゃダメだという気持ちにもなっていましたし、良い刺激を受けて練習できました」

─積極的に内川選手に質問などもできたのですか?

「さすがに最初は躊躇がありました(笑)。でも内川さんがいきなり、『ちょっとこい』と言って話をしてくれてからは、気軽に質問できるようになりました。とても充実した1月の自主トレでした」