3年連続Bクラスに沈んだカープだが、その戦いの中には確かな光も差し込んでいる。ルーキーながらクローザーに定着した栗林良吏、高卒3年目で遊撃レギュラーを獲得した小園海斗。彼ら“若い力”は、間違いなくこれからのカープを背負っていくはずだ。

春季キャンプ中、中村奨成(右)と会話を交わす栗林良吏。

◆3連覇を知らない若い選手が躍動

 2021年、カープはレギュラーシーズンを63勝68敗12分のセ・リーグ4位で終え、3年連続でBクラスに沈んだ。

 2016年からのリーグ3連覇と比較すれば低迷と捉えられてもおかしくない。2016年にリーグMVPを受賞した新井貴浩は現役を引退。2017〜2018年に同賞を獲得し、チームをけん引した丸佳浩も、すでにチームにはいない。菊池涼介、田中広輔も気付けば30歳を超えた。

 プロ野球という世界で『勝ち続けること』がどれほど難しいのか、チームも、ファンも痛感したシーズンだったと言えるだろう。

 しかし、今季の戦いぶりを見ると、“3連覇”を知らない若い選手の躍動が目立ったのも事実だ。チームの新陳代謝、世代交代は着実に進んでいる。

 その代表例が、ルーキーながらクローザーに定着した栗林良吏だろう。昨秋ドラフト1位でトヨタ自動車からカープに入団。当初は“1年目から先発ローテに入れる完成度の高い即戦力右腕”という触れ込みだったが、佐々岡真司監督は、プロでなんの実績もないルーキーを、開幕から“抑え”に抜擢。結果として、これが見事にハマることになる。

 開幕2戦目の中日戦(3月28日)でプロ初登板・初セーブを記録すると、そこから6月13日のオリックス戦で失点を喫するまで、22試合連続無失点。新人による開幕無失点のNPB記録を更新した。

 以降も大崩れすることなく、チームのクローザーを担い、東京五輪では新人ながら侍ジャパンに選出。代表でもクローザーを任され、金メダル獲得時には胴上げ投手にもなった。

 最速155キロの直球に、栗林の代名詞にもなった決め球のフォーク、さらにはカットボールとカーブといった変化球も高いレベルで兼ね備える。結果論だが、これほど『クローザー適正』が高いことを入団時に予想した者がどれほどいただろうか。

 また、シーズンを通して、本拠地・マツダスタジアムでの自責点は0。37セーブはNPBの新人歴代1位タイ。来シーズン以降、首脳陣もしばらくは、9回を誰に任せるかで苦悩することはなさそうだ。

 栗林とドラフト同期、2位入団の森浦大輔もチームのカンフル剤として大きな存在感を放ったひとりだ。

 クローザー・栗林と違い、その仕事場は6~8回のいわゆる中継ぎ。同期のドラフト1位がセーブを積み重ね、大きな注目を集めるその裏で、栗林を上回るチーム最多の54試合に登板。開幕から貴重な左のリリーフとして17ホールド挙げた。栗林やDeNAの牧秀悟らの存在に隠れがちだが、例年であれば、森浦も新人王候補と言っていい堂々たる数字を残している。(後編に続く)