カープの4番……そして、ジャパンの4番。想像を絶する重圧と闘いながら、それでも鈴木誠也は『現状維持』ではなく『進化』することを選択した。迎えた2021年、『進化』はひとつの完成形を見せ、球史に残る偉業を達成した。ここでは、東京五輪後の鈴木誠也の活躍を振り返っていく。

2021年シーズン、鈴木誠也は終盤に成績を伸ばし、キャリアハイとなる38本塁打を記録した。

◆日本プロ野球史上3人目。6年連続3割&25本塁打

 五輪では侍ジャパンの4番として全5試合に出場。1本塁打に終わったものの、日本の金メダル獲得に貢献した。

 野球選手として、ひとつの『勲章』を得た鈴木誠也は、後半戦、その勢いをさらに加速させていく。8月こそ月間打率・277、4本塁打と、やや東京五輪での疲れも見られたが、9月に入ると一気に『確変モード』に。

 9月3日のヤクルト戦・第4打席で左中間に20号本塁打を放つと、そこから9日の中日戦まで6試合連続で本塁打を記録。6試合連続は、王貞治(元巨人)、ランディ・バース(元阪神)の7試合連続に次ぐ、NPB歴代3位タイの大記録だった。

 一時はペース的に微妙かと思われていたシーズン25本塁打にも一気に到達し、打率も急上昇。9月22日の巨人戦で2打数1安打を記録して・31549とすると、DeNAのオースティンをわずか“2糸”だけ上回り、セ・リーグの首位打者に浮上した。

 結局、9月は25試合で打率・381、13本塁打、22打点。32安打をマークして7・8月月に続き、月間MVPを連続受賞。

 開幕前から、新たな取り組みをもとに着手していた進化が、ようやく一つの結果となって表れた。また、この時期の本塁打量産により、首位打者だけでなく、岡本和真(巨人)、村上宗隆(ヤクルト)によるマッチレースが続いていた本塁打王争いにも参戦。シーズン最終盤の10月にも19試合で6本塁打を放ち、キャリアハイを大幅に更新する38本塁打を放った。  

 獲得となれば、初のタイトルとなった本塁打王は惜しくも1本差で逃すことになったが、打率・317、出塁率・433で、自身二度目となる打撃二冠(首位打者・最高出塁率)を獲得。さらに、長打率・639、OPS1・072もリーグトップだった。

 6年連続の『打率3割&25本塁打』達成は、王貞治(元巨人)、落合博満(元中日ほか)以来、NPB史上3人目。リスクを恐れずに進化する道を選択し、球史に名を残す偉業を達成した。

 やはり“鈴木誠也”は、“鈴木誠也”だった――。カープの、日本の4番打者は、これからもさらなる高みを目指すに違いない。来年は、どんなドラマを届けてくれるか、楽しみに見守りたい。