サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏がチームに対する愛情と情熱をぶつける全力コラム。現在、11勝13分13敗でリーグ12位のサンフレッチェ広島。沢田謙太郎ヘッドコーチが監督として指揮を執ることになってから、いまだ勝ち星がない。苦しい戦いが続いているが、シーズン最終戦となる12月4日の徳島戦は、来季につながる試合をみせたい。今回のコラムでは、J1残留を決めた10月23日の仙台戦、11月3日の鹿島戦の戦いを振り返る。

湘南戦ではキャプテンマークを巻いてチームを統率した荒木隼人

◆気持ちの切り替えて奮闘した荒木隼人の姿

 10月23日の仙台戦(●0-2)は、開始10分で先制点を決められてしまい、負け試合の典型的な形になってしまいました。早い段階でミス絡みの失点をすると、ゲームプランがガラッと崩れてしまいます。

 得点力のあるストライカーがいるなど、チームとしての勝ち方が確立されておらず、地道に戦っていくしかない状況である以上、早い時間帯に先制点を奪われることは不利でしかありません。

 森島司や東俊希の惜しいシュートはありましたが、どれも決め切ることができませんでした。この仙台戦に限らず、今シーズンはこういった負け方が多かったと思います。サンフレッチェの負けパターンが凝縮されたような試合になったのは残念でしたね。

 11月3日の鹿島戦(●1-4)も仙台戦と同じく、わずか開始3分で先制点を奪われてしまいました。そこから攻撃のリズムをつかめず3失点。そして71分には荒木隼人がペナルティーエリア内で相手にPKを与えてしまい、4点目を奪われました。

 荒木が試合後に涙を流していましたが、彼は責任感が非常に強いので、自分のミスで失点して負けてしまったことがショックだったのでしょう。しかし、荒木はこれまでずっと素晴らしいプレーを続けてきました。そして鹿島戦の4日後の湘南戦ではキャプテンマークを巻いて粘り強く戦ってくれました。その気持ちの切り替えは素晴らしかったと思います。

 実は先日、カズ(森﨑和幸)と話したのですが、「涙は流してほしくなかった」と言っていました。

「これだけの選手なら、今からもっと悔しいことや落ち込むことが起きると思う。これぐらいでと言ったら言い方がよくないかもしれないけれど、これぐらいの失敗はこれから先もたくさんある。だから涙を流してほしくない。もっと苦しくて辛いことがあるから」と。修羅場をくぐってきたカズらしい言葉だと思いましたね。

 ただ、期間が短い中で気持ちを奮い立たせ、すぐに結果を出した荒木の姿も素晴らしかったと思っています。