スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 2年連続最下位チーム同士の対決となった今年の日本シリーズは、6戦全てが2点差以内の熱戦となり、4勝2敗で東京ヤクルトが20年ぶりの日本一を達成した。

 リーグ優勝直後には、監督の高津臣吾が選手たちに向けて発した言葉「絶対大丈夫!」が話題を呼んだ。

 この言葉は、9月7日、3.5ゲーム差で臨んだ首位阪神との対戦を前にミーティングの席で発したものだ。

「絶対大丈夫! 我々は絶対どんなことがあっても崩れません。自分を理解し、周りを信じ、チームスワローズが一枚岩になれば絶対に崩れない。絶対大丈夫、絶対いけるから。思い出したら、“絶対大丈夫”とつぶやいてマウンドや打席に立ってみてください。絶対いけるから」

 その夜、ヤクルトは12対0と大勝し、勢いに乗った。翌週の14日からは13試合負けなしの9連勝を飾り、首位を奪った。

 選手が不安な状態にある時こそ、監督の出番である。ボクシングで言えばセコンドだ。「僕は指示するのではなく、一緒に戦っている」。そう語ったのはボクシングの名トレーナー、エディ・タウンゼントだ。選手を「マイ・ボーイ」と呼んでいた。

 我がカープの佐々岡真司監督は、シーズン中、「マイ・ボーイ」たちにどんな言葉をかけていたのだろう。かつては「オレの背中を見ろ!」というタイプのリーダーもいたが、今の時代、それだけではもう通用しない。

 来シーズン、4年ぶりのV奪還のための前提条件として、指揮官の“言葉の力”をあげたい。ここぞという時に発する指揮官の一言は“言魂(ことだま)”となると信じたい。

(広島アスリートアプリにて2021年12月6日掲載)

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。