味のある脇役もチームづくりには欠かせない

 自分のことを思い返してみると、僕はプロ3年目の1991年、若手リーダーと呼ばれて全試合に出場している。その年、チームもリーグ優勝を果たしている。その年、チーム内には山崎(隆造)さん、正田耕三さん、小早川毅彦さん、達川(光男)さんなどベテランが多く、まだ駆け出しの僕のことを「おまえが行け、おまえが行け!」と前面に押し出してくれた。

 僕は先輩方に乗せられて1年間頑張れたし、おかげで優勝に貢献することができた。先輩にはたくさん怒られたが、それ以上にかわいがってもらったと思っている。つまりチームにはリーダーが必要だが、それと同時にリーダー以外の役割も必要だということだ。強いチームには個性的なキャラクターがたくさんいる。

 たとえば僕のときで言うと、リーダーが若いのなら、それをバックアップする魅力的なベテランが数多くいた。水戸黄門を見てもわかるように、御老公を中心に助さん格さん、うっかり八兵衛、風車の弥七……などいろんな個性がいてこそチームは盛り上がるのではないだろうか。主役だけではなく味のある脇役というものも、チームづくりにおいては欠かせないものだ。

 2010年を語る際に欠かせないプレイヤーのひとりである梵は、この年3年ぶりに規定打席に到達し、打率3割を達成。過去2年の不振から完全復活を遂げるとともに、盗塁王とゴールデン・グラブ賞を獲得。成績の振るわなかったチームの中で明るい光になってくれた。梵は内野手だし、ショートという一番野球がよく見えるポジション。だからリーダーになってくれるのではないかという期待も、正直なところ持っていた。

 ただ、僕の中のリーダー観に照らし合わせてみると、彼はリーダーとはちょっと違うのだ。それは個人的な感覚かもしれないし、もしかしたら他の人に言わせると、梵こそがまさにリーダーということになるのかもしれない。僕にとって梵のイメージは、僕が出てきたときの山崎さんや達川さんと重なるものがある。リーダーというよりは、出てきたリーダーを支えるタイプ。信頼できる補佐役といった感じだろうか。