ベテランはリーダーを支える存在であるべき

 自分の経験を考えてみても、ベテランというのはリーダーを支える存在であるべきだと思う。若い人がリーダーに祭り上げられたとき、そんなベテランがいてくれることがどれだけ組織にとって心強いか、想像してみればすぐにわかることだろう。

 たとえば会社のある部署で30代の若い部長が誕生したとしよう。部署には長らく勤務する50代のベテラン社員がいる。そのベテラン社員が若い部長を上手にサポートしながら業務を進めていくことで、部署の社員たちは大きな安心感を得ることができるだろう。

 僕はその「若手リーダーとベテランのサポート」という組み合わせは組織が円滑に動いていく理想的なイメージだと思っている。逆にベテラン社員が「本当は俺が部長をやるべきなのに!」といじけていたりすると、組織は目も当てられないものになる。

 また、あるとき別の中堅社員が若手部長のやり方に反旗を翻したとしよう。そんなときにベテラン社員が彼を居酒屋に呼んで、「まあ、いいじゃねえか。あいつにはあいつの良いところがある、おまえもおまえで良いところがあるよ」みたいな話をしてくれたら、ずいぶん風通しが良くなるだろう。それを受けて中堅社員の彼が「この人がそこまで言うのならもう一度気持ちを入れ直して頑張ってみよう」となってくれれば、それで組織は回っていく。

 僕にとって梵はそういうキャラクターなのだ。ある意味、故・いかりや長介さんあたりが演じていそうな、渋くて人情に篤い、魅力的なバイプレイヤー。それでいいんじゃないだろうか? そういう存在がいるチームは言うまでもなく強いはずだ。

●野村謙二郎 のむらけんじろう
1966年9月19日生、大分県出身。88年ドラフト1位でカープに入団。プロ2年目にショートの定位置を奪い盗塁王を獲得。翌91年は初の3割をマークし、2年連続盗塁王に輝くなどリーグ優勝に大きく貢献した。95年には打率.315、32本塁打、30盗塁でトリプルスリーを達成。2000安打を達成した05年限りで引退。10年にカープの一軍監督に就任し、積極的に若手を起用13年にはチームを初のクライマックス・シリーズに導いた。14年限りで監督を退任。現在はプロ野球解説者として活躍中。