お笑い芸人として活躍中のザ・ギース尾関高文氏の本連載。これまでカープに在籍した歴代外国人選手を、時には厳しく、時には優しく、時にはユーモアを交えながら、尾関氏ならではの視点で紹介していきます。今回は、全米ドラフト1位の経歴を持ち、先発として奮闘したブライアン・バリントン投手を取り上げます。

来日1年目から開幕4連勝を遂げるなど、先発ローテーションとしてフル回転したバリントン。

◆全米ドラフト1位からカープ先発の柱に!ラーメンをこよなく愛した助っ人

 「全米ドラフト一位」というカープ史上最も華やかな経歴を持ち、3連覇前夜にカープを支えてくれた“ミスター無援護”のナイスガイ。それがブライアン・バリントンです。

 バリントンが日本に来たのは2011年。2002年に全米ドラフト1位でパイレーツに入団するもケガなどで思うように結果を残せず、ブルージェイス、ロイヤルズなどを渡り歩いた末、新天地として選んだ球団がカープでした。

 前年のロイヤルズでは苦しんだバリントンでしたが、カープ入団1年目は素晴らしい制球力と多彩な変化球、ムービングボールを駆使して13勝。月間MVPも受賞するなど、一躍カープファンの神様的な存在へと躍り出ました。

 しかし2年目は7勝14敗と大きく負け越すバリントン。なかなか味方の援護に恵まれません。カープファンの方は「バリントンに無援護がすぎる」という思い出が強いのではないでしょうか

 そんな中でも腐らず淡々と投げぬくバリントン。あまりに勝てないので「僕はこういう人生だから仕方ないんだよ」とコメントした時は、ファンのほうが申し訳ない気持ちになったものです。しかしどこまでも紳士なバリントン。こんな事件もありました。

 連戦中のナゴヤドームで疲弊した中継ぎを休ませるため、ベンチのブルペンにつながる電話をテーピングで巻いて「DO NOT USE UNTIL AFTER 6TH(6回が終わるまでは使うな)」と書いたのです。心の底から広島の道徳の教科書に載せてもらいたい。そんな逸話です。他にも、土砂災害にあった方に色紙を送ったりもしていたバリントン。本当に素晴らしい人格者でした。

 さらにお茶目な一面もあったバリントン。ラーメン好きも度が過ぎるほどで、SNSで♯noodleupというラーメン好き御用達のハッシュタグを駆使しているのを見て、どんだけラーメンが好きなんだと驚いたものです。

 スカイツリーにも同僚エルドレッドと登って記念写真を撮ったり、広島では「バーバー和田」で髪の毛を切ったりと、日本にしっかりとコミットして結果を残したバリントン。その姿勢もピッチャーとして活躍できた一因なのでしょう。当時ルーキーだった九里亜蓮投手にも惜しみなくアドバイスを送り、九里投手からは師と仰がれてもいましたね。

 そんなバリントンでしたが、2014年に9勝を挙げるも自由契約となってしまいます。その後はオリックスへ移籍。2016年には米球界に戻ると、ロイヤルズ傘下のチームで現役を終えました。

 現在は、ブルワーズの国際スカウトとして活躍するバリントン。国際試合ではその元気な姿をよく見ます。Facebookこそ更新はありませんが、娘さんはバレーボールで活躍、双子の息子さんも元気にスクスクと育ち、家族で幸せに過ごされているようです。

 華やかな全米ドラフト1位からどん底を味わい、日本での活躍、そしてスカウトへの転身。

 どれだけ援護がなくても腐らずコツコツ頑張っていれば素晴らしい人生が待っているのだと、バリントンは教えてくれます。ありがとうバリントン。また大好きな一風堂を食べに、たくさん日本に来てくださいね。

著者が始球式の時に、バリントンから借りたグローブ。

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ザ・ギース 尾関高文(おぜきたかふみ)
広島県東広島市西条町出身のお笑い芸人、熱狂的なカープファン。好きな歴代カープ選手はロビンソン・チェコ投手。 2012年に出演したアメトーーク「広島カープ芸人」で、「カープ OB の北別府さんはブログのコメントに全て返信する」と語り、北別府氏のブログを炎上させた経験を持つ。

[尾関高文公式Twitter]@geeseojeck