甲府で42試合中41試合に出場。私生活では第一子が誕生し、父になった。「これが広島での最後のチャンスだと思うと、逆に吹っ切れた」この言葉に、これまでより逞しくなった野津田の成長がにじみ出ている。正ボランチの座を狙う、覚悟と挑戦のシーズンが始まる。(全4回のうち1回目・取材は2月上旬)

広島出身の野津田岳人。幼い頃から地元サッカークラブに在籍し、2009年からはサンフレッチェ広島ユースで活躍。高校生の時にJ1デビューを果たすなど、高い期待を背負ってプレーしてきた。

◆第一子誕生で心境が変化。家族の存在が自分を強くする

―甲府への期限付き移籍から1年ぶりにサンフレッチェに復帰されました。昨年11月には第一子が誕生されましたね。おめでとうございます。

「ありがとうございます。結婚したときもそうでしたが、家族のために頑張ろうと、より強く思うようになりました。独身のときとは違う感情が芽生えたことは、自分にとってプラスでありがたいことだと妻と子どもに感謝しています」

―生活もガラリと変わりましたか?

「実は、まだほとんど一緒に暮らせていないんです。妻の地元も広島なので、今は実家でお義母さんに手伝ってもらいながら子育てをしてもらっています。僕は練習が終わったら妻の実家に行き、夜の間は妻と子どもと過ごして、寝る時間になったら自分の家に帰る……というような生活を送っています。キャンプが終わったら一緒に暮らし始めようと思っているので、今回の記事が出る頃には育児にも奮闘していると思います(笑)」

―サンフレッチェにはイクメンの選手が多い印象です。アドバイスなどをもらうことも多いのではないですか?

「そうなんです。アオ君(青山)、晃誠さん(柴﨑)、カシ君(柏)、翔君(佐々木)など、しっかり子育てをしている選手が多いと思います。特にカシ君がスゴイという話はよく聞きますね。子どもが産まれてから、父親になることの責任の重さや大変さを知り、みんなスゴイなと尊敬しました。さらに、妻の姿を見て、世の中のお母さんたちの偉大さを感じました。オフシーズンは一緒に寝て、夜泣きをしたら起きて、おむつを替えたりしていましたが、キャンプが始まってからはふれ合いに行くだけで……(笑)。全て妻に任せてしまっているので、一緒に暮らし始めたら子育てもしっかりと頑張りたいと思っています」

―ではサッカーの話に移ります。昨シーズンのサンフレッチェは勝ち切れない試合も多く、最終順位は11位に終わりました。広島を離れている期間、チームの状況をどのように見ていましたか?

「移籍しても、広島の試合はなるべく観るようにしていました。在籍しているチームに集中することはもちろん大事ですが、やっぱり広島のことは気になっていましたから。広島でプレーし、ほかのチームも知っている自分だからこそ感じる広島の魅力は、選手個々の能力の高さです。それがあるからこそ、毎年J1で戦えているのだと思います。ただ、個々の能力に頼りすぎてしまい、うまくいかない部分もあったのではないかと思います」

―チームとして機能していなかったと感じることもあったわけですね。

「特に昨シーズンは、同じ監督の下で4年間、同じサッカーをしていたので、やり方だったり、マンネリ化していた部分があったのかもしれません。それでもしっかりとJ1で戦えていますから、今までの積み重ねが力になっているのだと思います。今シーズンは監督が代わり、これまでとは違うサッカーをすることになると思うので、個々の能力をうまく融合させることができれば、自然と結果はついてくると思っています。選手のクオリティは充分高いので、すごく楽しみです」(続く)

《プロフィール》
野津田岳人
1994年6月6日生 広島県出身/MF
●2021年成績
ヴァンフォーレ甲府/41試合・2得点 ※記録はリーグ戦のみ。