スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開!

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 パドレス入りが有力視されていたが、フタを開けると移籍先はカブスだった。ポスティングシステムを利用して移籍先を探していた鈴木誠也のカブス入りが決まった。ESPNによると5年総額8500万ドル(約100億円)。日本人野手としては歴代最高額である。

 結論から言えば、鈴木誠也はメジャーリーグで成功するだろう。打撃はもちろん守備にしろ足にしろ、彼にはウィークポイントが存在しない。打撃もパワーと確実性を兼ね備えている。カブスでも中軸を任されることになるだろう。

 注意すべきは本拠地リグレーフィールドの気紛れな風だ。シカゴは「ウィンドシティ」と呼ばれるほど風が強く、しかも一定していない。馴れれば問題ないが、しばらくの間は戸惑うかもしれない。

 経営者側と選手会側の対立により、開幕が延期されていたメジャーリーグ。懸念されていた試合数の減少は162試合制が確定したことにより、例年通りのレギュラーシーズンとなりそうだ。

 気になるのは交渉の終盤、経営者側が持ち出してきた「国際ドラフト」の導入だ。結局、結論は先送りされたが、もし、これが導入されれば、日本のアマチュア選手も米ドラフトの対象となる。「ヤンキース1巡目指名 佐々木朗希 大船渡高」などということが実際に起こりかねないのだ。

 もちろん米国に行く行かないは本人の自由だが、メジャーリーグが野球の盛んな中南米、東アジアに「国際ドラフト」という名の投網をかけ、支配下に置こうという計画を進めていることに対しては警戒が必要だろう。「セイヤ・スズキをハイスクール卒業後にとっていたら8500万ドルではなく、85万ドルもあれば十分だった」。そんな声が聞こえてきそうである。

 カープフリークの皆様、18年間に渡ってご愛読いただき、ありがとうございました。東京や広島の街角で、あるいはどこかの球場でお会いできる日を楽しみにしております。NO CARP,NO LIFE!

(広島アスリートアプリにて2022年3月21日掲載)

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。