◆2大エースのDNAを継いで 独自のエース像構築を

 最後に大瀬良は、黒田博樹、前田健太と2人の偉大な投手とプレーした貴重な経験があります。球界を代表する投手のプレーを間近で見れたというのは、他球団であれば普通は考えられないことですし、大瀬良の野球キャリアを考える上で大きなプラスでしょう。

 大瀬良も年齢を重ねる中で、徐々に自分のことだけではなく、周囲を見渡せるだけの視野を持てるようになってきたはずです。そうした時に、また黒田や前田の姿を思い出すことで、気づくこともたくさんあるでしょう。

 カープの絶対的エースと呼ばれた2人とプレーした時間やかけてもらった言葉は、大瀬良にとってかけがえのない財産です。ぜひ2人の良かった点を取り入れた上で、2人のやり方に固執するのではなく、大瀬良大地という投手が思い描く自らのエース像をつくり上げていってほしいですね。

 事実、カープの歴代のエースたちが全員同じ考え方、同じ雰囲気だったかと言うとそうではなかったはずです。エースと呼ばれた投手たちはそれぞれ年齢を重ねていく中で、弱点を克服した上で自らの個性をマウンドで表現していました。

 特に今季はこれまでとは比べ物にならないぐらい困難なシーズンですが、ぜひ大瀬良自身多くの投手から目標とされる“エース”を目指してほしいと願っています。

<プロフィール>
大野 豊(おおの ゆたか)
1955年8月30日生、島根県出身。77年にテスト入団を経てカープに入団。79、80年はリリーフとして2年連続日本一に貢献。84年に先発へと転向すると、88年には最優秀防御率、沢村賞を受賞。北別府学、佐々岡真司、黒田博樹などのエースたちと共にプレーし、前田健太が初の最多勝を獲得した10年は一軍投手コーチを務めていた。通算成績は148勝100敗138セーブ。