2006年高校生ドラフト1巡目でカープに入団した前田健太投手。ルーキーイヤーは背番号34を背負っていた。

◆3年目にぶつかったプロの壁

 そして迎えたプロ2年目の2008年、序盤から一軍で先発の機会を得た前田の初勝利は6月の日本ハム戦。7回2死まで無安打の快投でプロ初勝利をマーク。お立ち台では「初めまして! 前田健太です!」とファンに挨拶するなど、インパクト抜群のデビューを飾った。後半戦からは完全に先発ローテに定着して9勝を記録。背番号18・マエケンの名は完全にファンに認知された。

 前田が頭角を現す中で印象的な勝利が2つある。旧広島市民球場最後の公式戦ではプロ初本塁打を放つなど旧市民球場最後の勝利投手となり、マツダスタジアム元年となる2009年4月には、同球場でのカープ初勝利試合で完封勝ちを収めた。節目での印象的な活躍は新たなスター誕生を予感させた。

 前田のプロ野球人生は一見、順調にエースへの階段を駆け上がっているように見えるが、初めてプロの壁にぶち当たったと言えるのがプロ3年目の2009年だった。当時前田はシーズンをこう振り返っている。

 「意外に精神的に弱かったかな(苦笑)。今年でひと回り強くなったように思いますけど、まだまだですね。高校生のときは自分が一番だと思って投げていますからどんどんいけましたけど、プロに入って今季ほど負けがついたことはなかったので。さすがにちょっと、ダメでしたね。ヘコんではないんですが『何で勝たれへんかな』と。自信をなくした訳じゃないですが、先発する試合には不安がありました」

 この年は開幕から先発ローテの一角として投げ続け、自身2度の大型連敗を喫するなど8勝14敗。前年7つの勝ち越しから、6つの負け越しに。だが、初の規定投球回越えとなる193回はチーム最多、29試合の先発登板のうち22試合でクオリティースタートを記録。勝ち星に恵まれなかったが、内容的にはカープの先発の柱として恥ずかしくないものだった。

 3年目にプロの厳しさを味わった前田。この悔しい経験を経て、翌年から快進撃が始まることになる。