1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。 

 第1回目の特集は、黒田博樹のインタビューセレクション。

 広島とニューヨーク、ふたつの街に愛された男、黒田博樹。揺るぎない信念と覚悟を胸に、日米で活躍したその足跡は、今なお多くのアスリート、ファンの心に残り続けている。過去、広島アスリートマガジンに掲載された独占インタビューを再構成し、黒田博樹さんの言葉に込められた思い、生き様を改めて紐解いていく。

 ここでは、2001年8月号掲載のインタビューを紹介。この年リーグ最多完投を記録するなど力投を続け、“ミスター完投”と呼ばれるようになった黒田。先発の軸として12勝を記録し、初の二桁勝利をマーク。当時、夏場のインタビューでは完投に対する自身の考え、シーズン通しての投げ抜きたいという強い意志を口にしていた。

2001年は27試合に登板し、自身最多となる13完投を果たした

◆1点取られれば、次の1点を与えない投球

— 今季の初勝利は遅かったのですが、それは精神的に焦りみたいなものはありましたか?

黒田 確かに焦りはありましたけど、……うーん、そうですね、早く一勝しないことには始まらないんで、早く一勝したいというのはありましたけど。まあでも、それで焦って逆にね、ピッチングがおかしくなってしまってはいけないんでね、投げる試合はそんなに気にせず、いつか勝てるやろ、ぐらいの気持ちでやってました。粘り強く自分を忘れずにという感じでね。

— 打線が打てない時など、守りで負けた時期が続いたので、周りが何とかしてあげろよという意識は本人の中でもあったのですか?

黒田 いや、あんまりそういうのは気にしなかったですけどね。エラーというのは結局は球が飛んだら何か起こりますからね、そういうのは付きものだと思うんで。だから、エラーした時どれだけ、特に新井(貴浩)とかがエラーした時に抑えたろっていう気持ちになるかですね。やっぱり、いつも守ってもらってるんで、たまにはエラーもあるんで。そういうエラーをした時にしっかり抑えていって周りから信頼されるピッチャーになりたいな、とは思いますけど。

— 本人はもちろん気にしているわけですよね。

黒田 気にしなくていいところまで気にしてて、あいつは。あいつは結構気にしてて当分言ってたんじゃないですかね、会う度に。

— 今年は勝ち星にこだわるということですよね。

黒田 まあなかなかね、勝ちたい時に勝てなかったんで、こだわりたいという面もあるんですけど、今はなんとか防御率が2点台で、良いので特に防御率を意識して……意識してっていうか、勝てない時にね、勝ち星が付かない分、防御率を意識していこうかな、というのを自分の中で思っていたんで、それがずっと続いてこういう形で2点台後半ですけど。だからこれからもね、勝ち負けは付く時と付かない時があるんで、それを割り切って防御率を意識して。だから、大量失点をしないように1点でも少なく。1点取られれば次の1点はやらない、という考え方で直ぐ切り替えて。それが、今のところ防御率に繋がっていると思うんで、まあそういう防御率を意識して、1点でも少なくというピッチングをしとけば、やっぱりね勝ち星も付いてくると思うんで。

— リードについては全部西山(秀二・元カープ捕手・現野球解説者)さんに任せているんですか?

黒田 そうですね、任せっきりで。自分もちょっと考えないといけないんですけど。まあ本当にうまく引っ張ってもらってるんで。今までマスクかぶった年数もすごいし、経験というのもすごいんで、そういう人にリードしてもらって、西山さんのリード通り投げるっていうぐらいなんで。