カープOBであり、現在はクリケット選手として活躍する木村昇吾氏が、今季のカープの戦いぶりを独自の視点で分析。今回は、マウンドに立つ投手にプラスαの力をもたらす存在について語ってもらった。

今季の一軍ブルペンを支える中﨑翔太(右)と塹江敦哉

◆互いに思いやり、励ましあい、マウンドをつないでいく

 皆さんこんにちは!昇吾です!

 開幕ダッシュに成功し、勝ち負けを繰り返しながらAクラスをキープしているカープ。先発投手がしっかりとゲームメークしてくれる安定感に加え、中継ぎ、抑えも試合をこわすことなく、しっかりとバッターに向かっていき抑えてくれる姿は、ファンの皆さんも落ち着いて観ていられるのではないでしょうか。

 もちろん打たれることもあります。失点もします。四球も出します。ただ、“どういった経緯でそうなったか”が大事です。

 逃げたり不安な気持ちを持ったまま投げた結果なのか、強打者やピンチを迎え、バッターに向かっていった結果なのかでは大きく違いますし、その後の展開にも影響があります。

 想像してみてください・・満員の球場、大歓声の中、ピンチの場面で、めっちゃ気合いの入った強打者を迎える光景を。チームのみんなが点を取り、失点を防ごうと頑張ってきた試合を自分のせいで台無しにしてしまうかもしれないという恐怖を。

 プロ野球選手とはいえ、毎回この恐怖に打ち勝つのは不可能に近いですし、マウンドは思っている以上に孤独。一人で全てを背負わなければならないだけに、それを共有できるのも同じ投手陣です。

 高校野球であれば、“俺がエースナンバーを!”と競い合い、チーム内でのバトルの結果、ときにはダブルエースの仲が最悪なパターンも・・僕の高校時代の一つ上はそんな感じでした(苦笑)。

 しかし、プロは気持ちが分かる者同士なので、投手陣の結束は固く、互いを想いやり、励ましあって、あのマウンドをつないでいきます。

 抑えを経験した(大瀬良)大地や、3年連続で胴上げ投手に輝いたザキさん(中﨑翔太)らの知識や経験が、良い影響を与えて、今の投手陣につながっていると思います。

 それでも不安が勝ってしまうこともあります・・しかし!カープにはもう一つ大きな影響をもたらす要因が・・そう!言わずと知れた真っ赤なスタンドです!

 あの声援は本当に力になります。

 ヒーローインタビューなどで、選手の「ファンの皆さんの声援が・・」という言葉を数多く耳にすると思いますが、“ほんとにそう思っている?”“自分の力で勝ち取ったと思っているのでは?”と思っていたりしませんか?

 僕もプロに入る前は少なからず思っていました。でも、プロに入ってファンの方の声援の心強さを知り、球団初のクライマックスシリーズを敵地の阪神甲子園球場で戦った時、半分を真っ赤に染めてくれたカープファンの光景を見て、その思いは確固たるものになりました。

 試合開始前からあの凄まじいアウェー感の甲子園がホームさながらの雰囲気に!負けられない戦いに向かうチームを支えてくれるだけでなく、“これは勝てる!”とまで思わせてくれるくらい大きな力になりました。結果的に、阪神に2連勝!

 2戦目に勝利し、スタンドのファンの皆さんに挨拶しに行ったのも、誰かが行くぞと言ったのではなく、自然にみんなの足があの場所に向かわせ、ファンの方々の笑顔や涙、ありがとう〜!と言う声に、“こちらこそ、この雰囲気をつくり上げてくれてありがとう!”という気持ちなったのを鮮明に覚えています。

 シーズンはまだまだ始まったばかり!これからチームが波に乗れないこともあると思います。そんな時は皆さんの声援が、必ず彼らの大きな勇気と力になりますので、今年のカープを、皆さんの力で勝利へと導いてくださいね!

 では、また!

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◆ライター 
木村昇吾(きむら しょうご)
1980年4月16日、大阪府生まれ。尽誠学園高で3年夏に甲子園出場。愛知学院大に進学し、遊撃手でベストナインを5度獲得するなど活躍。2002年ドラフト11位で横浜に入団。2007年オフに広島にトレードで加入すると、一軍に欠かせないユーティリティープレイヤーとして活躍した。2015年オフに西武にテスト生で入団。2017年にクリケットに転身すると、2018年にはクリケット男子日本代表強化選手団に選出された。クリケット界の世界最高峰であるインディアン・プレミアリーグ(IPL)での活躍を目指し、現在も競技を続けている。

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