30試合を戦って16勝13敗1分で、セ・リーグ3位のカープ。OBの笘篠賢治氏に、5月戦線のカギを握る打撃陣について語ってもらった。

今季のカープは、しぶとい打撃、積極的な走塁で得点力アップを狙う(今年の春季キャンプで撮影)

◆相手チームが嫌がる攻撃をいかに展開できるか

 3連勝を飾った4月24日の試合。延長10回裏、1死満塁の場面で三塁走者の坂倉将吾に代えて、代走に中村奨成を送った采配も見事でしたが、この試合はもう一つ、印象に残った場面がありました。

 9回裏の上本崇司の場面です。得点こそ入りませんでしたが、1死一塁から上本にしっかりと送らせて、一打サヨナラのケースを作りました。

 今シーズンは、このように、“こういうことをされると嫌だな”という、相手にプレッシャーをかけながらの戦いを見せてくれています。

 この9回裏の場面、無死一塁から、打者の小園海斗がバントを決めればよかったのですが、エンドランなどいろいろなケースがある中で、ベンチの采配を見ていると、確率の高い野球を選んでいると思います。もし、上本が打ちにいき、凡打に終わっていれば2死一塁。相手投手にとっては投げやすい場面を招いていただけに良い采配だったと思いますね。

 今のカープは、つないで走者をためて、得点圏で勝負強い打撃をするのが持ち味です。そのため、それを防ごうとする相手チームとのせめぎ合いになってくると思います。4月27日と28日のヤクルト戦をみると、ヤクルトはそのあたりの対策を上手く練っていました。対ヤクルトをどう乗り越えていけるかが、今シーズンの重要な鍵を握りそうです。

 特に4月27日の試合では、床田寛樹をどう攻略するかがしっかりと見てとれました。床田は、そこまで投球内容は悪くなかったのですが、パームなどの抜き球ではなく、インサイドの真っ直ぐを、ヤクルト打線に狙い撃ちされているような感じでした。配球傾向を研究されていたのかもしれません。

 ヤクルトは、私が在籍していた頃から、“このカウントではこれを投げてきがちだから狙っていこう”というデータを重視した戦いをしていましたからね。それだけに、そういった配球面は、今後に向けて見直していったほうがいいかもしれません。