お笑い芸人として活躍中のザ・ギース尾関高文氏の本連載。これまでカープに在籍した歴代外国人選手を、時には厳しく、時には優しく、時にはユーモアを交えながら、尾関氏ならではの視点で紹介していきます。今回は、2003年にカープに在籍した大砲、ジミー・ハースト選手を取り上げます。

2003年にカープに在籍したジミー・ハースト

◆警備員を3人増やすという伝説の持ち主

 お騒がせ助っ人ときいて、みなさまは誰を思い出すでしょうか。

「神のお告げがあった」と7試合の出場で帰国した阪神グリーンウエルでしょうか。それとも「熱がある」「膝が痛い」と試合を直前ですっぽかし無断帰国までした、ダイエーのケビン・ミッチェルでしょうか。最近では2軍戦に自転車で来て「足が疲れたから」と言って帰宅したという、巨人フランシスコ選手も記憶に新しいですね。

 いつの時代もお騒がせ助っ人は我々野球ファンの心をワクワクさせてくれます。(自チームにいたらワクワクどころではありませんが)

 カープにかつて在籍していたジミー・ハーストは、まさにカープファン以外をワクワクさせてくれる選手でした。

 ハーストが日本に来たのは2003年。身長199センチ100キロとその風貌からついた名前は「カープボブサップ」。2メートル100キロと言えば元日ハムのオバンドーを誰もが思い出します(?)がカープファンはこのハーストが頭に浮かびますね。ベンチプレス175キロ、スクワット300キロというサップも顔負けのパワー。フィレオフィッシュを愛するそのキャラクターで、カープファンの心を鷲掴みにします。

 そして我々カープファンの期待が確信に変わったのが春季キャンプでした。なんと沖縄でのキャンプで場外ホームランを打ち美容室の窓ガラスを破壊するのです。警察まで出動したこのニュースは翌日の新聞の一面を飾り、それだけでは飽き足らず翌日も民家にホームランを打ち込み警備員を3人増やすという伝説を作ります。ここまで活躍の確信演出が続く助っ人も珍しい。窓ガラスを割られた美容室デコのご主人も、あのハーストがガラスを割った店として語り継がれると思ったに違いありません。しかし全ては壮大な前振りだったのです。

 開幕してすぐに初ヒット初打点を記録した数日後に、プレイ中足を滑らせ負傷。その後エラーやホームランを繰り返し、再びぎっくり腰で欠場。5月にはライトからの送球を三塁ベンチに突き刺し、一瞬4番に座ったかと思えばすぐ外されます。

 そしていよいよ運命の6月。阪神戦で慣れないダイビングをキャッチしたカープサップは、首を負傷。そのままベンチに下がり、なんと2度とその姿を見ることはありませんでした。奇しくもその日はもう一人のお騒がせ助っ人ブロックが判定に激昂し退場になった直後。お騒がせコンボが決まった記念的な日でもありました。
 
 その後ハーストはメキシカンリーグに在籍し、野球人生を終えます。

 今でも思います。ハーストとはなんだったのだろうと。僕たちを最高にワクワクさせてくれて、最終的に流星のように消えていったハースト。きらめきのピークこそ春季キャンプという早すぎるものではありましたが、確かにその姿は我々ファンには強く残っています。

 毎年何人もの助っ人が日本にやってきます。結果を出す助っ人、試合にも出れず帰ってしまう助っ人。そんな中でファンを沸かせてくれる、語り継がれるという意味で、お騒がせ助っ人は大事な存在です。近年はそんな存在も少なくなってきましたが、今後も僕はジミーハーストの姿を探し続けることでしょう。そしてできればその姿をカープではなく、ちょっと遠くの場所から眺めたいなどと思うのです。

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ザ・ギース 尾関高文(おぜきたかふみ)
広島県東広島市西条町出身のお笑い芸人、熱狂的なカープファン。好きな歴代カープ選手はロビンソン・チェコ投手。 2012年に出演したアメトーーク「広島カープ芸人」で、「カープ OB の北別府さんはブログのコメントに全て返信する」と語り、北別府氏のブログを炎上させた経験を持つ。

[尾関高文公式Twitter]@geeseojeck