思わず心を奪われる!カープの話題をゆる~くまったりと展開してくれる“オギリマワールド”。関東出身ながら中学生からカープファン。独自のタッチで描かれるイラストを交えたコラムでおなじみのオギリマサホが、広島アスリートマガジンWEBで、新たなカープの魅力を切り取る。今回スポットを当てたのは新加入の秋山翔吾。日本を代表するヒットメーカーを、オギリマ視点でゆる~く取り上げる!

◆深夜の広島駅にラッパを吹きながら迎えに行きたい気持ちになったニュース

 スケールの大きな話とは無縁の人生を歩んできた。今もし宝くじで10億円当選したとしたら、喜ぶよりも先にうろたえて、どうしていいか分からなくなってしまうだろう。

 というようなことを思い起こさせるようなニュースが、先月舞い込んできた。「秋山翔吾、カープ入団」である。MLB・パドレス傘下の3Aエルパソ・チワワズを自由契約となり、日本球界復帰を表明していた秋山の獲得に、古巣である西武、ソフトバンク、そしてカープが参戦したというニュースは聞いていた。

 しかしこの時点ではカープファンは誰も、「秋山がカープに来る」とは思っていなかったのではないだろうか。「秋山が所属していたレッズとユニフォームが似ているからかな、秋山は赤が似合うなぁ」くらいにしか思っていなかった筈である。

 ところが急転直下、秋山がカープに入団することを決意したと報じられた。これを聞いたカープファンの多くは、喜ぶよりも先に驚いたことだろう。「大物選手が自分の意思でカープに入団する」という状況に全く慣れていないからだ。

 タイトルを獲得したような大物選手がカープに入団するケースは、過去に何例かあった。しかしそれは江夏豊(元南海)や高沢秀昭(元ロッテ)のようなトレードであったり、石井琢朗(元横浜)のような自由契約後の移籍先であったり、長野久義(元巨人)のようなFAの人的補償であったりということで、必ずしも「選手本人の意思」ではなかったように思う。現に1993年に始まったFA制度において、一人も選手を獲得していないのは、12球団のうちカープだけだ。

 いつしか「大物選手がカープに来てくれるわけがない」という卑屈な思いを抱くようになってしまった、その矢先の秋山入団である。秋山獲得を担当した鈴木清明球団本部長ですら、「『えっまじ!?』って言ってしまった。頭が真っ白になった」(※1)と言っていたわけで、一般のカープファンの驚きようは想像に難くない。

 ちなみに6月27日の深夜に第一報を聞いてからの私の心の動きは「飛ばし記事ではないかと疑い、他の情報源を探す」→「どうやら本当らしいと分かり、うろたえる」→「前田健太や鈴木誠也がもし日本球界に復帰したとして、カープ以外の球団を選んだ時のことを想像し、西武ファンに申し訳なく思う」→「来てくれるからには全力で応援しよう、いっそのこと『秋山翔吾選手ようこそ広島へ』というのぼりを作って、深夜の広島駅にラッパを吹きながら迎えに行きたい」というものであった。皆さんはどうだろうか。

 今後の秋山のカープでの活躍を期待しつつ、将来大物選手がカープに入団することになったあかつきには、もう少し泰然自若とした態度がとれるように心を鍛錬していきたいと思っている。

※注1:サンスポ・2022年6月27日

https://www.sanspo.com/article/20220627-WD7AGHE5MZPR7NXPBSY27M2OPY/

 

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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。