日本を代表するヒットメーカーである秋山翔吾のカープ移籍は、多くのプロ野球ファンに驚きをもたらした。ここでは改めて、過去カープに移籍入団、復帰入団を果たし注目を集めた選手たちの言葉を振り返っていく。

 今回は2014年オフにカープ復帰を果たした当時の新井貴浩独占インタビュー(広島アスリートマガジン2015年8月号掲載)をお送りする。

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2015年に広島復帰後、プレーのみならず精神的支柱としてもチームを支えた。

◆カープの“良き伝統”を伝える

― 若手の多いチームのなかで、どのような立ち位置、意識でプレーされていますか?

「チームを引っ張っていく意識はどこかであるかもしれません。若い選手がどう思っているかはわかりませんが、自分が引っ張るというよりも、40歳近いおっさんですけど(苦笑)、まずは自分が一生懸命プレーしてとにかく球に食らいついて、必死でプレーしようと思っています」

 ― ご自身のプレーする姿から、若手に感じてほしいというお気持ちもあるのでしょうか?

「確かにそういう気持ちはあるかもしれません。僕も若い頃、緒方(孝市)監督、野村(謙二郎)さん、前田(智徳)さんなど、ケガをしているなかでも練習をして、試合が始まったら気持ちを込めてプレーしている姿を見て育ってきました。それはベテランになっても、実績がどれだけあっても、気持ちを全面に出してプレーするというのが、カープの良い伝統だと思います。僕たちも若い頃それを見て感じてきたので、カープの良いところは引き継いでいかなければいけないと思っていますし、頭のなかにありますね。たとえば、少し実績を残したとか、年をとっているということだけで手を抜いたプレーをするとか、そういうことは絶対にしたくありません。どんなときでも諦めないでプレーするのがカープの良い伝統だと思います」

 ― 後半戦(2015年当時)、夏場に向けて厳しい戦いが続きます。

「僕はまだ一度も優勝した経験がありません。でも優勝まで1ゲーム足りなかったとか、10ゲーム以上離していて巨人に大逆転されたという経験はあります。それを経験して『あのときこうしていれば』とか『あの試合で打っていれば』とたくさん思うことが出てくるんです。だから後から後悔しないように、先のことを考えながらやるのではなく、その日を全力で一生懸命するという積み重ねが大事になってくると思います。勝つために120%の気持ちを込めていくのは今からです。借金がいくつだとか考えがちですが、とにかく今日の試合、今日が終われば明日という気持ちですね。極端に言えば“今日が最後”くらいの気持ちを持って戦っていきたいですね。そして気づけば最後に一番上にいて、みんなで喜びたいですね」

新井貴浩◎あらい たかひろ
1977年1月30日生、広島県出身
広島工業高校から駒大を経て、1999年にカープ入団。2005年には本塁打王に輝くなど主力として活躍するも、2008年に阪神へFA移籍。その後2014年に黒田博樹とともにカープに復帰すると、4番として打線をけん引。25年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。2018年現役を引退。現在は野球解説者、野球評論家として活躍。