日本を代表するヒットメーカーである秋山翔吾のカープ移籍は、多くのプロ野球ファンに驚きをもたらした。ここでは改めて、過去カープに移籍入団、復帰入団を果たし注目を集めた選手たちの言葉を振り返っていく。

 今回は2014年オフにカープ復帰を果たした当時の新井貴浩独占インタビュー(広島アスリートマガジン2015年8月号掲載)をお送りする。カープ復帰後の新井氏の「4番への思い」とは?

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カープ復帰初年度の背番号は『28』。2015年シーズン途中から4番に定着した。

◆“4番”は特別なもの

―復帰後初スタメンでは4番スタメンでした。意識する部分もあったのでしょうか?

「とても不思議な感覚で、その試合は夢みたいな感じでした。スタメン発表のときにマツダスタジアムのスタンドが湧いてくれたのが分かりましたし、本当にうれしかったですね」

 ―4月17日以降は4番に定着されました。再びカープの4番を打っていることに関して、どんな気持ちですか?

「やっぱり期待してもらって、そこで使ってもらっているので、その期待に応えたいという気持ちと、緒方(孝市)監督には使ってもらっているという感覚が自分のなかにあるので、何とか必死にやっているという感じです。僕にとって4番は、やはり特別なものですね」

 ―復帰後初本塁打は、5月9日の阪神戦でした。昨季までのホームグラウンドである甲子園で放った一発になりました。

「7年間ホームグラウンドとして戦った球場でしたし、自分の名前がコールされたときに、カープファンだけはでなくて、阪神ファンからも拍手をいただいたんです。それは本当に想像できなかったですし、『自分は幸せなやつだな』と思いました」

 ―5月22日のヤクルト戦では、黒田投手が先発し、4番の新井選手が本塁打を放ってチームは勝利しました。この試合はご自身にとっても印象に残る試合だったのではないでしょうか?

「8年前と同じように、黒田さんが先発として投げて、僕が4番としてホームランを打って勝つなんて、漫画でもドラマでも、ドラマチック過ぎて、ないなと思いましたね(笑)。本当に夢みたいな感じでしたし、すごく印象に残っている試合のひとつですね」

 ―左手の故障などもありましたが試合に出続けられて、得点圏打率がリーグトップと勝負強さを発揮されています。その要因はどこにあると思われますか?

「1試合1試合に強い気持ちで『この試合に勝つんだ』という気持ちを込めて打席に立てているのが結果につながってくれているのだと思います。チーム、ファンのみなさんの応援が僕をそういう気持ちにさせてもらっているというのが、正しい言い方かもしれません」

 ―過去に本塁打王に輝いた経験がありますが、本塁打へのこだわりはありますか?

「やっぱり打ちたい気持ちはありますね。でもあまり意識し過ぎると力みにつながっていきますし、これまでの経験上ホームランを意識して打席に立って良かったことは一回もありません。もちろん打ちたいし、打てるに越したことはないですが『まずは打点を』という気持ちでやっています」

 ―安打数を見ると、2000安打も近づいてきています。

「それはまだまだですし、本当に意識していません。1試合1試合勝ちたい、貢献したいと思っているので意識していません。もちろん記録が数本に近づいてくれば、また違った感情が出てくるかもしれません」

=後編へ続く=

新井貴浩◎あらい たかひろ
1977年1月30日生、広島県出身
広島工業高校から駒大を経て、1999年にカープ入団。2005年には本塁打王に輝くなど主力として活躍するも、2008年に阪神へFA移籍。その後2014年に黒田博樹とともにカープに復帰すると、4番として打線をけん引。25年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。2018年現役を引退。現在は野球解説者、野球評論家として活躍。