チームが直面する課題

 このあたりからチームが直面する課題というものが浮き彫りになってきた。たとえば、「調子が良いのは鯉のぼりの季節まで」「交流戦に弱い」「チャンスになると一打が出ない」「巨人にめっぽう弱い」「中日と戦うと必ず競い負ける」「連敗が始まると止まらない」「秋以降に失速する」……それはメディアからも何度も指摘され、ファンも承知しており、選手たちも当然自覚しているカープならではのジンクスのようなものだ。

 本来それはジンクスなどではなく、チームにこびりついた負け癖と呼ぶべきものだが、これに縛られてしまうのがカープ最大の問題だった。自分たちでつくった悪癖なのに、それを意識することでますます委縮して、さらに傷口を広げる悪循環に陥ってしまう。

 交流戦においても、試合前から空気が重い。みんな交流戦という雰囲気に呑まれている。過剰に構えてしまい自分たちの野球を見失っている。普通なら連敗しても「明日こそ頑張ろう!」となるのだが、あまりに連敗が続くものだから「明日もまずいんじゃないか……」という調子で、いわばノイローゼ状態になっている。

 このあたりから僕の使命は、そんなチームに貼りついた悪しきレッテルを一枚一枚剝がしていくことになった。もはや呪縛のようになっている負け癖を取り除くのは並大抵の努力じゃダメだ。

 たとえば交流戦の苦手意識を完全に払拭しようと思ったら、交流戦で優勝するくらいのショック療法が必要だ。結果を出すことで自分自身に対しても、周りに対しても「俺たちはできるんだ」と証明していくしかない。

 しんどいことかもしれないが、チームが前進していくためには目の前に立ちはだかるこうした障壁を、一つひとつクリアしていくしか手立てはないのだ。

●野村謙二郎 のむらけんじろう
1966年9月19日生、大分県出身。88年ドラフト1位でカープに入団。プロ2年目にショートの定位置を奪い盗塁王を獲得。翌91年は初の3割をマークし、2年連続盗塁王に輝くなどリーグ優勝に大きく貢献した。95年には打率.315、32本塁打、30盗塁でトリプルスリーを達成。2000安打を達成した05年限りで引退。10年にカープの一軍監督に就任し、積極的に若手を起用13年にはチームを初のクライマックス・シリーズに導いた。14年限りで監督を退任。現在はプロ野球解説者として活躍中。