日本代表で大舞台を経験し、プレーと精神面の両面で充実感がみなぎるサンフレッチェ広島のDF・佐々木翔。 圧倒的フィジカルで守りの要となり、勝負どころでは空中戦を制してきた。

 その強さは日本代表でも遺憾無く発揮され、7月27日に開催されたEAFF E-1 サッカー選手権 2022 決勝大会 韓国戦では、相馬勇紀(名古屋)のCKにヘディングで合わせ貴重な追加点を上げる活躍。日本の4大会ぶり2度目の優勝に大きく貢献した。

 サンフレッチェの主将としてチームを率いる中で彼が感じているのは、今シーズンの広島が 「希望に満ちている」ということ。4つ目の星に向けての挑戦を続ける、ファイター・佐々木翔の言葉をお届けする。

2022年は開幕からフル出場、好調なチームをけん引してきた佐々木翔。

◆事前にデザインされた攻撃の形。積み重ねてきた練習が実を結ぶ

―7月2日磐田戦(○3-0)、セットプレーで野津田岳人選手の鋭いボールに合わせた佐々木選手のヘディングシュート。素晴らしいゴールでした。

 「ガク(野津田)には、ゴール前のエリアでGKに向かっていくような、強くて速い球を要求しました。ファーサイドや真ん中のエリアを狙っていたらもう少し緩い球になっていたと思うので、ニアでGKに向かっていくイメージだったからこそ、あのような強いボールが蹴れたのだと思います。そもそも、ナッシム・ベンカリファが相手の先頭DFを引き出して前で潰れるという形はあらかじめデザインされていたもので、最初からセットプレーの狙いとしてありました。ナッシムが自分の仕事をしっかりとやってくれたからこそ、あそこまでスペースが空いたんだと思います。今シーズンはセットプレーからの攻撃のパターンを数多くトレーニングしていましたが、ここまでなかなか結果につながっていませんでした。『トータルでは良いプレーができているけれど、セットプレーでもう少し得点を重ねたい』とスキッベ監督もおっしゃっていたので、理想通りの展開になって、本当に良かったです」

―1得点目の荒木隼人選手の得点も、セットプレーから生まれました。

 「セットプレーで得点を決められると、試合運びが楽になりますね。いつもセハット・ウマルコーチが相手チームを分析して、どういうプランでセットプレーからの得点を狙っていくかということを僕たちに提示してくれています。磐田戦でのセットプレーは、2点ともそのプラン通りの結果になりました」

―今シーズンの好調の理由を、佐々木選手はどのように見ていますか。

 「自分たちからアクションを起こしているという点が一番の要因だと思います。相手の出方を見て動くというよりは、常に自分たちから仕掛けることができています。狙いを持って強くプレスするし、攻撃をつなぎながらも裏を取ったり、一瞬のチャンスを逃さないように自ら動き出すということを、とにかく意識して続けています。特にプレスに関しては、今シーズンのキャンプが始まる前段階から『力を入れていこう』と言われていました。どんどんハイプレスをかけて前からボールを奪っていくトレーニングには時間をかけていますね。初めはなかなか上手くいかなかったのですが、監督が合流してからは緩急のバランスをチームに落とし込んでくれたので、次第に上手くいくようになりました」

―若手選手たちの勇猛果敢な戦いぶりも、チームに大きな影響を与えているのではないでしょうか。  

「それは間違いありません。前線の選手たちが生き生きとプレーをしているのが、後ろから見ていても伝わってきます。守備も攻撃も自分たちからアクションを起こしていこう、前に前に出て行こうという意識が影響しているんだと思います。特にマコ(満田誠)は、シーズン序盤は苦労していましたが、練習を続けて良いプレーをすれば必ずチャンスが巡って来るということを体現しています。磐田戦で途中出場した(棚田)遼は、ここ1~2週間の練習で行ったショートゲームでは断トツでゴールを決めていました。しっかりトレーニングを積んでいるからこそ結果が出せていますし、磐田戦では点こそ取れませんでしたが、大きなチャンスを迎えていました。スキッベ監督は、連戦中であってもボリュームのある練習を行うので、その中でハードにプレーできているということが、チャンスが巡ってきたときに活躍できる要因になっていると思います。良いサイクルが生まれていますし、若手選手のことを頼もしく感じています」

―スキッべ監督が発する言葉には、ポジティブなものが多いように感じます。

 「選手に自信を持たせてくれる監督です。どんな分野でもメンタルはとても大事だと思いますが、今はチーム全体が非常に良い状態で試合に臨めていると思います。試合当日に数選手が出場できなくなったとき、代わってスタメンに抜擢されたのは若い選手が多かったのですが、監督が試合に臨む考え方をしっかりと全員に伝えてくれました。『誰が出場しても強く戦えるんだ』ということを話して支えてくれたおかげで、良い結果につながったのだと思います」

 =後編へ続く=

佐々木 翔◎ささき しょう
1989年10月2日生、神奈川県出身
177cm・70kg/DF
城山高-神奈川大-甲府(2012〜2014)-広島(2015〜)
サンフレッチェ『鉄壁DFライン』の一角。特に空中戦では無類の強さを誇り、広島の最終ラインを堅守する。2019年、日本代表に初選出。EAFF E-1 サッカー選手権 2022 決勝大会に招集されると2試合でスタメン出場し、優勝のかかった韓国戦では貴重な1点を上げた。