野球界のエリートといわれる道を歩んだ田中広輔。二塁手の菊池涼介とともに鉄壁の二遊間としてカープの内野を支え、2016年からの三連覇にも大きく貢献した。
東海大付相模高、東海大、JR東日本……。高卒でプロ入りを果たした選手に比べると、プロの世界に足を踏み入れるまで少し遠回りしたかもしれない。だが、着実に力をつけた6年間が無駄ではなかったことは、その後の田中自身が証明している。
ここでは、入団直後の2014年に収録した田中の独占インタビューを再編集してお届けする。ルーキー当時の田中が語るポジションへのこだわり、そして初のキャンプを終えた手応えとは。
◆自分がやるべきことをやれば、チャンスは巡ってくる。
―キャンプからここまで、コンスタントに結果を残し続け、周囲からの期待値というのが高いように感じるのですが?
「それが、全然感じていないんです。普通だったら、手応えもあるし結果は出ているので、ある程度そう感じる部分っていうのはあると思うんですけど、なんかそういう感じもないですし、僕自身どこでどう使ってもらえるのかまったくわからないので……(苦笑)」
―どこでどう使われるかという部分に関してですが、練習試合、オープン戦と本職のショート以外にもセカンド、サードとこなしユーティリティー性をアピールされていますね。
「試合に出られればどこでもいいんで、強みになるというのはあります。ただ、やっぱりショートにこだわっていきたいというのはありますね」
―打撃面でもオープン戦規定打席に達してはいないものの、打率5割と好調ですね。キャンプ初日に新井(宏昌)打撃コーチ(当時)からフォームの指摘を受けていましたが、それがうまくはまってきているのでしょうか?
「そうですね、外の球の感覚も良くなってきていますし順調にきていると思います」
―どんな意図があって打撃フォームを変更することになったのでしょうか?
「新井コーチからは、インコースの球をさばきやすくするように、スクエアにした方が良いって言われて、それからその形で練習していました。元々、インコースが苦手だったというわけではなかったんですけど、調子が悪いときは特に見逃すことが多かったんです。そこを新井さんに指摘されて変えてみようと。今までクロスになっていたので、スクエアに変えたあとは、なんだかすごく開いているような感じがして、日南キャンプのときは違和感ありました。でも沖縄キャンプでの阪神戦で、アウトコースの変化球が打ててヒットが出たので『ああ、こういう感じだったらいいのかな』っていう手応えをつかみましたね。ときどき、アウトコースが遠いように感じるときがあるんですけど、それはボールの見方だったりもあるので、今は問題なく打てています」
―これまで紅白戦や対外試合などを行ってきて感じた課題などはありますか?
「守備だったら、やっぱりプロは打球が速い打者が多いので、それに遅れないようにすることを心がけています。打席だと、プロの投手はコントロールがいいので失投や甘い球が少ないんですよね。そこをいかに1球で仕留められるかや、走り打ちしないで、とにかくしっかり振ろうと心がけています」
―野村謙二郎監督は『試合勘のある選手』と評価していました。
「そうですね。自分でも『試合勘』というのは今までも、大事にやってきている部分でした」
―その『試合勘』が確立されたのはいつ頃なのでしょうか?
「中学のボーイズリーグの、監督が野球を良く知っている方だったんです。それでいろんな難しいサインプレーをしたり、細かなプレーをしたりっていうのが基礎になっているのかなと思います。そのまま東海大相模高に入って、付属相模高も厳しかったので、技術とか野球観が鍛え上げられたのかなと。常にレベルの高い環境だったのでそれが一番の要因だと思います」
―内野には、梵英心選手、菊池涼介選手、堂林翔太選手と熾烈なレギュラー争いが繰り広げられています。この中を勝ち抜いていくために何が一番重要だと思いますか?
「自分がやるべきことをずっと続けられるかだと思うんです。変に意識して打った、打たない、エラーした、エラーしていないで一喜一憂するんじゃなく、常に1年通してコンスタントに結果を出せれば、どこかでチャンスは巡ってくるのかなと思っています。虎視眈々と狙っていきます」
《プロフィール》
田中広輔●たなかこうすけ
1989年7月3日生、神奈川県出身
右投左打/171cm81kg
東海大付属相模高−東海大−JR東日本−広島(2014年ドラフト3位)
社会人1年目から都市対抗野球大会で若獅子賞を獲得。